<親が政治家ならその子も政治家になって当然─という風潮は、政治家という職業の「家業」としての固定化につながりかねない(略)政治の恩恵を国民各層に行き渡らせる上で、能力や適性を度外視した世襲制は政治の矮小化につながる懸念がある>

 昨年12月20日付の北海道新聞朝刊の<読者の声>欄で、こう嘆いていた70代の男性派遣社員は今、どう感じているのだろうか。

 岸信夫前防衛相(63)=衆院山口2区=は2日、所属する自民党安倍派の会合に出席し、近く議員辞職する考えを表明した。3日に細田博之衆院議長(78)に議員辞職願を提出する方針で、安倍晋三元首相の死去に伴う衆院山口4区補欠選挙とともに、4月23日投開票で補選が実施される見通しとなった。

 大臣在職中から体調を崩し、車いすに座った状態のまま予算委員会などに出席していた岸氏。支持者らに対して「辞職するのはじくじたる思いがあるが、やむを得ない事情で申し訳ない」などと語ったというのだが、SNSなどで<封建社会か>といった声が出ているのが、辞職に伴う補選に岸氏の長男・信千世氏(31)が出馬する意向を固めた──と報じられたことだ。

 開会中の国会では、岸田文雄首相(65)の長男で首相秘書官を務める翔太郎氏(32)が岸田首相の外遊に同行した際、公用車で観光していた疑惑が報じられ、野党側は「身内びいき」と激しく追及している。その最中の「世襲候補」報道だけに注目が集まったようだ。

 時事通信によると、昨夏の参院選で当選した125人のうち、「父母、義父母、祖父母のいずれかが国会議員」「三親等内の親族に国会議員がいて同一選挙区内から出馬」のいずれかを満たす議員を「世襲」と定義した場合、14人が当選。当選率は73.7%で、全体の当選率の22.9%を大きく上回っていたという。

 2021年10月17日付の日本経済新聞は、1996年以降の衆院選の全選挙区、全候補者について傾向を分析したところ、候補者全体の13%が「世襲」で、その勝率は重複立候補した比例代表による復活当選を含めて80%あり、世襲候補は7割が自民党から出馬していた──と報じていた。

 自民党国会議員にとって、もはや「世襲」は当たり前なのだろうが、世論の反発は強いようだ。

<つらい仕事であれば子どもに継がせない。そう考えれば、国会議員はよっぽどオイシイ仕事なんだろう>

<議員報酬を半額にして、献金をなしにしたら、いったどれくらいの世襲議員が減るのだろうか>

<戦国時代や江戸時代か。この感覚が日本をダメにしているのが分からないの?>

 もちろん「世襲候補」とはいえ、あくまでも当選するか、しないかは地元有権者の判断次第。さて、どうなるのか。

日刊ゲンダイ
2/2(木) 16:20
https://news.yahoo.co.jp/articles/3196b0dc7ccb06f80226ccc54c3b09917e5ea575