突然届く「国葬の招待状」

 〈謹啓 故安倍晋三国葬儀を左記により挙行いたしますので御案内申し上げます 敬具〉

 愛知県内で働く大山昌宏氏(52歳)の自宅に国葬の案内が届いたのは、9月10日のことだった。封を開けた大山氏は正直、戸惑ったという。

 「私は'09年の総選挙で東海ブロック比例40位から出て、政権交代の風に乗って当選した民主党の末端議員でした。'12年の選挙ではあえなく落選し、今は民間で営業をやっています。安倍さんとはまったく接点なんてないのに国葬に呼ばれるのは謎です……」

 安倍晋三元総理の国葬が開かれる9月27日まで、あと数日しかない。ところが国民の追悼ムードは一向に高まっていない。岸田政権が重ねてきた国葬の「ウソ」が次々と判明しているからだ。

 国葬には約6000人が招待されることになっている。招待の対象は、8月31日時点では「地方公共団体代表のほか、三権の長、国会議員、海外の要人、立法・行政・司法関係者、各界代表等」とされていた。

 しかし、ここには明白なウソがあった。冒頭の大山氏などの「元国会議員」にも続々、招待状が届いているのだ。元参院議員の野末陳平氏は語る。

 「出席したいのですが、外せない用事が入っているので欠席します。自分が招待されるとは知らず、突然、招待状が届いて驚きました」

宮本亞門さんも首を傾げる

さらに「各界代表」という括りも適当で、安倍氏を批判してきた人にまで案内状が届けられている。演出家の宮本亞門氏はこう首を傾げる。

 「私は安倍氏が推し進めた検察庁法改正案やオリンピック開催に反対を訴えてきました。それなのになぜ国葬案内状が届いたのか、未だに不明です」

 しかもこの案内状は中身も杜撰だった。返信の期限に修正テープが貼られ、「十三日(火)」と手書きされていたものも多かった。また冒頭で引用した案内文も不自然だ。「謹啓」で始めたら「謹言」「謹白」「敬白」で結ぶのが一般的だ。

 宮本氏に届いた招待状に至っては、宛名に「亜門」と印字されていたが、正しい漢字は「亞門」。名前すら間違えるほど、いい加減なのである。

 勢いで「日本武道館で6000人」という枠を決めたが、誰が来るかをなかなか確定できない。なし崩し的に招待客の範囲を広げることになり、ミスが相次いだのだろう。

 とはいえ岸田文雄総理にとっては「弔問外交」という頼みの綱があった。これさえできれば、国葬をやった意味があったと胸を張れる。

 「当初は50人ほどの首脳級が集まり、要人との交流を通して外交関係を強化する……という話でした。ところがG7の首脳で参加するのはカナダのトルドー首相だけで、アメリカはハリス副大統領しか来ない。

 安倍元総理と関係が深かったトランプ前大統領や、ドイツのメルケル前首相も来ません。26日まで国連総会が開かれているという日程も致命的でした」(野党中堅議員)

 こうなってくるとつい比べてしまうのが、19日に行われたイギリス・エリザベス女王の国葬だ。日本からは天皇皇后両陛下、アメリカからはバイデン米大統領夫妻と、世界各国の紛れもないトップが参列していた。

 ウエストミンスター寺院で行われた「本物の国葬」をテレビで見ながら、岸田総理は不安に駆られたことだろう。

 「一方、足元の日本ではちょっとした準備もスムーズに行かない。岸田さんにハッパをかけられて、温厚な性格で知られる国葬担当の森昌文補佐官も各担当者を呼んで怒鳴り散らしていますよ」(元大臣経験者)

2に続く

現代ビジネス
9/23(金) 7:07
https://news.yahoo.co.jp/articles/81a09f1fc6e71785422da1e12c6364d3d96827b6