7月の参院選で、与党が改選過半数を獲得して大勝した一方、政治団体「参政党」が1議席を獲得した。初挑戦の国政選挙だった参政党が、議席を獲得できた背景には何があるのか。選挙結果や読売新聞社の出口調査をもとに分析すると、三つの要因が見えてきた。

今回当選したのは、参政党副代表兼事務局長の神谷宗幣氏だ。大阪府吹田市議などを務めた後、2020年に元衆院議員の松田学氏(現党代表)らと結党した。党は、三つの重点政策として「子供の教育」「食と健康、環境保全」「国のまもり」を掲げている。

 参院選では、「自虐史観からの脱却」など、保守色の強い主張を各地で展開。比例選では約176万票を獲得し、初の国政進出を果たした。現職の国会議員がいない政治団体が初めて挑戦した国政選としては異例の得票数だ。どんな人たちが支持したのだろうか。

今回の参院選では、保守系の政治団体が数多く候補を擁立した。比例選では、移民の受け入れに反対する「日本第一党」や、自主憲法制定を訴える「新党くにもり」、1990年代から何度も国政に挑戦してきた「維新政党・新風」などが候補を擁立したが、得票は「日本第一党」が約10万票、「新党くにもり」が約7万票、「維新政党・新風」は約6万票にとどまった。参政党だけ議席に手が届いた理由は、保守色の強さ以外に何かありそうだ。

 「参政党の最大の特徴は、『反ワクチン』や『脱マスク』の主張だ。『コロナ疲れ』を感じる子育て世代や若者の一部に食い込んだことが、得票につながったのではないか」。コロナ下で初めて行われた今回の参院選を振り返り、同志社大学の飯田健教授(政治行動論)はこう分析する。
 

参政党はコロナ対応について、「子ども世代への接種反対」「マスク着用の自由化」を唱える。党の政策を解説した単行本では、「莫大な利益獲得を目的とする『あの勢力』が、コロナ禍の恐怖を過剰に 煽あお るために、新聞やテレビなどのメディアを利用して盛んにマスク着用を呼びかけている」(「参政党Q&Aブック基礎編」)といった「陰謀論」的な主張も目立つ。三つの重点政策には含まれていないものの、選挙戦最終日に都内で行った街頭演説では、候補者の多くが政府のコロナ対応批判に時間を割き、「今の政治は国民の健康や命まで取ろうとしている」などと訴えた。

 「反ワクチンとか陰謀論とか色々言われるのは分かった上で、でも、誰かがその受け皿にならないと、民意が反映されない」。参政党副代表の神谷氏は選挙後、インターネット番組でこう語った。イデオロギーと直接、関係なく、かつ、国民に関心の高いテーマで、あえて極端ともとれる主張をすることで、他党との差別化を図る狙いがありそうだ。

 新型コロナの感染者数は、参院選が終わった後に急増し、過去最多の感染者数を記録している地域も相次いでいる。参院選のタイミングが少しずれていたら、選挙結果は違った可能性もあったかもしれない。

 参政党に投票した層の意識を探るため、参院選が行われた7月10日、投票を終えた全国の有権者約8万人を対象に読売新聞社・日本テレビ系列各局が実施した当日出口調査のデータを見てみよう。

 比例選で参政党に投票したと答えた人は、年代別で見ると、最も高かったのが18、19歳で7%。年代が上がるほどパーセンテージは下がり、70歳以上が最も低く2%にとどまった。考えれば、ワクチン接種率は、若い世代ほど低く、高齢者は高い。

比較的若く、特定の支持政党を持たない層に浸透したことがうかがえる。

 「参院選の争点として特に重視した政策」を尋ねると、参政党に投票したと答えた人では、最も多かったのは「子育て・教育政策」21%。次いで「外交・安全保障」19%、「景気・雇用」15%の順だった。「外交・安保」や「景気・雇用」を挙げた人は、全体平均(ともに17%)と大差ないが、「子育て・教育政策」は全体平均より8ポイント高い。

 これらのデータは、「子育て世代や若者のコロナ疲れが参政党支持に結びついた」とする飯田教授の分析と合致していると言えるだろう。

https://www.yomiuri.co.jp/column/opinionpoll/20220810-OYT8T50005/amp/

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