東芝と一体で株主提案を不当に妨げようとしたとする外部弁護士の報告書の指摘について、梶山弘志経済産業相は15日の閣議後会見で、同社が国の安全保障に関わる技術を保有していることを挙げ「経産省の政策として当然のことを行っているまでだ」として、問題がなかったとの認識を示した。ただ、報告書の中身について疑問を呈しながらも、独自調査を行わず真相究明に及び腰だ。(原田晋也)

 報告書の指摘について、東芝は経産省との間で法令順守上の問題があったと認め、役員ら4人を退任させると発表したばかり。一方、経産省の対応は事実認定を避け、職員の処分にも否定的で、東芝と大きな隔たりがある。
 梶山氏は、東芝がレーダー関連など安全保障の技術開発を担っていることなどを挙げ「日本にとって重要な企業」と指摘。「一般論として個別企業に今回のような対応を行うことはないが、国の安全確保やそれに欠かせない事業や技術の発達が損なわれる恐れがある場合は対応することがある」と説明した。
 報告書の中身には「事実関係に疑問を持たざるを得ない箇所がある」と反論。ただ反論箇所については「こちらから指摘する必要はない」と具体例を示さず、経産省として独自調査をする考えもないと明言した。
 報告書では、株主と電話会議をした経産省が内容の詳細を即座に東芝に伝えるなど「国家公務員法の守秘義務に抵触し得る情報提供も当然のように受けていた」と指摘。梶山氏は「守秘義務違反に当たるか確認する必要はない」と述べた。
 報告書によると、昨年7月に開かれた東芝の株主総会前に、取締役選任の提案を行っていた筆頭株主の投資ファンド「エフィッシモ・キャピタル・マネージメント」に対し、経産省は提案を取り下げるよう圧力をかけたとされる。別の株主に、この提案に賛成しないよう働きかけていたとの記載もある。

東京新聞
2021年06月15日 21時13分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/110779