◇ ◇ ◇
疑惑の発端は昨年7月の参院選広島選挙区を巡る元法相、河井克行被告夫妻の買収事件だ。今年7月、関係先として検察当局がガサ入れしたのが河井氏側に多額の献金をしていたアキタ社だった。
「押収した大量の資料を分析する中で、吉川氏に現金が渡っていたことが判明した。いわゆる派生案件ですが、バッジ(政治家)を挙げたい特捜部にとって贈収賄は別格の事件です。アキタ社側は『鶏卵業界に便宜を図ってもらう目的で現金を渡した』『違法と認識していた』と認めているそうですし、特捜部は動かぬ証拠をつかんでいるはずです」(司法担当記者)
吉川氏は農相を務めた2018年10月から19年9月にアキタ社の元代表と少なくとも8回面会し、そのうち3回は大臣室で会っていた。その際に計500万円の現金を受け取った疑いがあるという。
■当の吉川元農相はトンズラ入院
鶏卵業界は、価格の安定対策などで政治と密接な関わりがある。農相の立場で所管する業界から現金を受け取っていたら、職務権限に直結し、収賄に問われる可能性は高い。
吉川氏は2日、コメントを発表。地元や党関係者に「ご心配をおかけしていることをお詫び申し上げます」とし、選対委員長代行など党役職をすべて辞める意向を二階幹事長に伝えたという。二階派の事務総長も退任する方針だ。また、「先週不整脈となり急きょ、その病院に入院したことから対応することができませんでした。しばらく検査の上、治療に専念しなければならない状況となっております」と、入院していることも明かした。
大臣室で現ナマを受け取り、都合が悪くなると役職を辞して病院にトンズラとは、どこかで聞いたような話だ。自民党には“甘利方式”のマニュアルでもあるのだろうか。
「入院は古典的な手法ですが、雲隠れは印象が悪い。安倍政権の7年8カ月で動きを封じられてきた検察にしてみたら威信をかけた捜査ですから、吉川氏も立件は免れないと観念しているのではないでしょうか」(政治評論家・有馬晴海氏)
さらに、カネを受け取っていた自民党農水族は、吉川氏だけではないと言われている。
「身に覚えがある議員は少なくないでしょう。すでに、内閣官房参与の西川公也元農相や本川一善元農水次官がアキタ社所有の豪華クルーザーで接待されていたことが報じられています。アキタ社側が、吉川氏の他にもカネを渡した自民党議員の名前を当局にゲロったとの情報もある。具体的には農水族のドンや大臣経験者、党の大物幹部ら5人の名前が党内で取り沙汰されています。日本養鶏協会の幹部は、2015年のTPPハワイ会合でも自民党の交渉派遣議員団に随行していました」(自民党関係者)
業界団体とズブズブでやってきたのが自民党だ。
国会が閉じた途端、底なしの鶏卵汚職がハジケる可能性もある。
日刊ゲンダイ
2020/12/03 14:30
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/282156/