菅政権が需要喚起策「Go To」キャンペーンの修正に踏み切った。新型コロナウイルスの爆発的な感染拡大に懸念を示す専門家の圧力に押されたためだが、経済再生を重視するあまり対応が後手に回った感が強い。運用の見直しも小幅にとどまり、感染を抑え込めるかなお不透明だ。

 「国民の命と暮らしを守るのが政府の最大の責務だ」。菅義偉首相は21日、首相官邸で開いた新型コロナ対策本部の後、記者団にこう強調した。ただ、「タイミングは遅くなかったか」との問いには答えずに立ち去った。

 「Go To」キャンペーンは、感染拡大防止と同時に社会・経済活動の再開を図る菅政権の象徴的な事業。縮小・停止の方向に向かえば景気の腰折れに直結しかねないと判断し、継続に強気の姿勢を貫いてきた。

 だが、11月に入って感染状況は「第3波」とも言える様相を呈する。政府のコロナ対策分科会は9日、「急速な感染拡大に至る可能性が高い」と警鐘を鳴らし、早急に対策を打つよう求める緊急提言を提出。医療の専門家や野党の間に、キャンペーンが「元凶」だとする批判が広がった。

 政府はそれでも動かず、ある政府高官はその頃、「都道府県知事が求めない限り適用除外はしない」と言い切っていた。

 しかし、各地で続々と感染確認が過去最多を更新。18日からは連日、国内全体で2000人を上回る感染者が出るに及び、人出が見込まれる3連休の初日に当たる21日にようやく方針を転換した。分科会の緊急提言からは12日後の対応だ。

 ただ、対策本部で打ち出したのは、「Go To トラベル」のうち感染拡大地域向け旅行の新規予約一時停止や、「イート」事業のプレミアム付き食事券の新規発行中断など。キャンセル料の補償が発生する予約済みの旅行は停止の対象に含めず、21日の対策本部で首相が表明した「より強い措置」と言えるか微妙だ。

 運用見直し後の制度設計もあいまいだ。首相は21日、「一時停止はいつからどこで始まるのか」との記者団の質問にも答えず、西村康稔経済再生担当相は記者会見で「具体的な内容は観光庁で検討する」と述べるにとどめており、新たな混乱を招く可能性すらある。

時事通信
2020年11月22日07時10分
https://www.jiji.com/jc/article?k=2020112100467&;g=pol