学校法人「森友学園」への国有地売却に関する財務省の文書改ざん問題で、自殺した近畿財務局職員、赤木俊夫さん(当時54歳)の妻雅子さん(49)が国や同省理財局長だった佐川宣寿氏に賠償を求めた訴訟の第2回口頭弁論が14日、大阪地裁(中尾彰裁判長)であった。赤木さんは改ざんを指示された経緯を記録したファイルを残しているとされ、妻側は国に地裁への提出を要求。国側は存在するかどうかも明らかにしなかったが、今後、ファイル開示の可否が訴訟の焦点になりそうだ。

 妻側は同日までに、赤木さんの元上司と雅子さんが2019年3月に面会した際の録音データを地裁に提出した。財務局で学園との交渉を担当していた元上司は、このデータで「(改ざんは)佐川さんの判断」と断言。ファイルについても「これを見たら我々がどういう過程で(改ざんを)やったのか全部分かる」と話していた。地裁は証拠採用を検討する。

 この日の弁論で妻側は、赤木さんが自殺に至った心理的な負担を立証するには、改ざんの指示を受けた回数などを具体的に明らかにする必要があるとし、国側にファイルの開示を求めた。国側は改ざん内容や経緯には争いがないことから「回答の必要がない」と反論している。

 雅子さんは法廷で「私と夫の立場に立てば、答える必要がないという回答がどれだけ心を傷つけるか想像できると思います」と訴えた。国側は12月までに開示の可否を検討するとしている。

 録音データによると、元上司は改ざんについて「赤木さんは涙を流しながら抵抗していた。僕自身も抵抗したけど止めきれなかった。やる必要もないと思っていた」と言及。国有地を売却した際、鑑定価格から地中ごみの撤去費として約8億円を値引きした点については、「8億の算出に問題がある。撤去費が8億になるかというところの確信というか、確証が取れてない」などと問題視する発言もしていた。

 財務省は学園と売買交渉をした際の決裁文書を改ざん。その作業に加担させられた赤木さんは18年3月に自殺した。【伊藤遥】

 主な発言は以下の通り(録音データより)。( )は補足

改ざんについて
・初めから赤木さんは改ざんに抵抗していました。正直、涙を流しながら抵抗していた。本省(財務省)に、僕自身も抵抗はしていたんですけれども、止めきれなかった。

・(赤木さんが改ざんの経緯について記したファイルを)パラッとだけ見たんです。「めっちゃきれいに整理してあるわ」と。全部書いてあるやんと。どこがどうで、何がどういう本省の指示かっていうこと。これ見てもうたら、我々がどういう過程でやったかというのが全部分かる。

・なんか変な口ごもった話になったら申し訳ないですけど、もちろん(改ざんの)判断は佐川さんの判断です。

・(改ざんを)手放しでは受け入れてはないです。抵抗はしました。やる必要もないと思っていましたし。僕自身もやはりあの当時、かなり追い込められているところもあって。赤木さんと同じように、朝遅くまで仕事をして。何人けがするか分からないような状況の中で、「少しでも野党から突っ込まれるようなことを消したい」ということでやりました。そこはもう追い詰められた状況の中で、少しでも作業量を減らすためにやった。僕自身はそういう理解です。当時、「なんで国会議員の名前を消さなあかんねん」みたいなのはあったんですけど、僕自身も少し引け目はありました。

安倍晋三前首相の関与について
・僕は安倍さんとかから(国有地売却について)声がかかったら、正直売るのはやめていると思います。だから、あの人らに言われて減額するとか、そういうようなことは一切ないです。

・そんたくとかっていう言葉が出てますけど、そんなことはしてません。そういうことをしたというのであれば、僕は検察でもお話しして、背任でも何でも、ろう屋にでも入ります。

国有地の売却額について
・(値引きの根拠となる)地下埋設物がどれだけ埋まっていて、どれだけの(撤去)費用がかかって、どれだけ売り払い価格から控除しなければならないかというところを、自分たちは最後まで調べようと努力したんです。(国有地を管理していた国土交通省の)大阪航空局のせいにするつもりも今さらないんですけど、彼らは動かなかったんです。売り払いの鑑定評価をするにしても、地下埋設物の調査をするにしても、航空局が(財務省の)主計局に言って予算を取って、それで動かす。我々は予算を取る権限がない。自分らでスコップで掘って調べるわけにはいかないですから。

2に続く

毎日新聞
2020年10月14日 20時31分
https://mainichi.jp/articles/20201014/k00/00m/040/282000c