7年8カ月にわたって安倍政権で官房長官を務めた菅義偉氏が新しい首相に選ばれた。新型コロナウイルス対策で難しいかじ取りを迫られる中、森友問題など前政権が残した課題への対応も求められる。各地からは新内閣への期待や注文の声が上がっている。

 安倍政権では、学校法人「森友学園」への国有地売却を巡り、不明朗な値引きや財務省による決裁文書改ざんなどが相次いで発覚した。疑惑は十分に解明されておらず、政権の継承を掲げる菅首相にも、調査や説明を求める声が上がっている。

 「首相の顔を替えただけで、まるで安倍政権が続いているようだ。隠蔽(いんぺい)体質が続くのではないか」。森友問題で、国に情報開示を求める訴訟を起こした上脇博之・神戸学院大教授は批判する。菅首相は官房長官だった際、疑惑の解明に後ろ向きな発言も多く、国民の不信を招いた。上脇教授は「首相になった菅氏には、国民の持つ疑問にしっかりと答える誠実さを持ってほしい」と注文を付けた。

 改ざんに関与させられて自殺した近畿財務局職員の妻は、政府に第三者委員会による調査を求めているが、安倍政権は拒否。菅首相は14日に自民党総裁に選出された際、「客観的におかしいと思ったことは正していく」と話したが、調査については明言しなかった。

 森友問題が発覚するきっかけとなる訴訟を起こした木村真・大阪府豊中市議は「前政権を継承する菅首相は済んだ話とするつもりかもしれないが、引き続き責任追及をしていきたい」と強調した。【藤河匠】

毎日新聞
2020年9月16日 19時07分
https://mainichi.jp/articles/20200916/k00/00m/010/230000c