自民党の菅義偉総裁(71)が16日、衆参本会議で第99代首相に選出された。病気のため、任期途中で辞任した安倍晋三首相(65)の後継として2012年12月以来、7年8カ月ぶりの新政権となった。自民、公明党連立の新内閣が発足したが留任(再任含む)15人、平沢勝栄復興相(75=二階派)ら5人が初入閣するなど派閥人事の色濃く、サプライズ起用もなく、安倍政治を継承する顔ぶれとなった。

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菅義偉首相が就任会見で新たな決意を伝えた。アベノミクスを継承し、コロナ対策や経済再生をこれまで通りに提唱した上で「国民のために働く内閣を作る」とした。一方で安倍晋三前首相の在任中に問題となった「桜を見る会」について「私が総理になったのを期に来年以降は中止する」と明らかにした。「森友問題」は「結論が出ている話」と終決宣言し、10月説が浮上する衆院の解散総選挙については「1年以内に解散総選挙はある」と明言を避けた。官房長官時代と同じ冷静沈着な口調からはぶれない意志がにじむ。厳しい視線で前を見据えていた。

この日の首相指名選挙で菅氏は衆院で投票総数462票中、過半数の314票を獲得、参院でも過半数を獲得して首相指名された。だが、7年8カ月ぶりに誕生した新内閣に新鮮味はゼロだ。まさに「アベノマンマ内閣」と形容できる。安倍政権でおなじみの15人が留任(再任)し、初入閣5人を含めて総裁選で菅氏を支持した5派閥にバランス良く配分した。

総裁選を戦った岸田派2人、石破派1人も入閣して、党内融和もぬかりない。若手や民間起用などのサプライズ人事もない。閣僚の平均年齢60・4歳だ。二階俊博幹事長は「世間で言われている派閥どうのこうのは、ありません」と不快感をあらわにしたが二階派で入閣待ちの平沢氏抜てきは総裁選でいち早く菅氏支持を表明した二階氏へ配慮の色が濃い。

一方で安倍路線を継承する実務派の菅氏らしく、派手さはないが、コロナ禍の政権のかじ取りに経験値のある実力重視の面々をそろえたとも言えるが、お手並みを拝見するしかない。コロナ禍でネット通販が増大して家庭ゴミに段ボールが増えた。秋田から単身上京して段ボール工場で働き、粉じんにまみれて汗を流した。「世の中は当たり前のことが当たり前ではない」と、目の当たりにして政治を志した。現実の社会を、庶民の思いを肌で知っている。国民宰相の新たな船出に国民は期待を込める。【大上悟】

日刊スポーツ
2020年9月16日19時43分
https://www.nikkansports.com/general/nikkan/news/202009160000865.html