安倍首相の後継を決める自民党総裁選は、国会議員票の約8割の支持を得た菅義偉官房長官の圧勝でほぼ間違いないが、永田町の関心は早くも水面下で始まった「暗闘の行方」に移っているという。

「すでに菅官房長官をめぐる様々な醜聞が週刊誌で報じられ始めていますが、その内容のどれもが細かい。これは誰かが、何らかの意図をもってリークしていると考えて間違いないでしょう。菅長官が小此木元通産相(故人)の秘書だった時の知人にまで記者が取材に来たと聞きましたからね。その人は『なぜ、俺のことを知っているのか。当時の菅さんをめぐる具体的な話を記者が知っていて本当にびっくりした』と話していました。おそらく、第2、第3弾の醜聞報道が出る可能性は高いでしょう」(国会議員秘書)

 リークしているのは、総裁選をめぐる合同会見で「菅支持」を表明した細田派、麻生派、竹下派のいずれかとみられている。目的はもちろん、二階派に対する牽制だ。

「今回の総裁選は二階幹事長があっという間に菅勝利の流れを作ってしまったため、3派は乗らざるを得なかったのが実情ですが、このまま二階幹事長続投による『傀儡政権』ができることだけは絶対認めたくない。週刊誌リークは『分かっているよな』という菅さんに対するメッセージで、森元首相が『安倍さんの本心は岸田(政調会長)さん』とわざわざ発言したのも、そういう意味と受け取られていますよ」(前出の国会議員秘書)

 興味深いのは二階幹事長続投には米国も神経を尖らせているという点だ。外務省担当記者がこう言う。

「米国と中国が激しい覇権争いをしているのは周知の事実ですが、そんな中で習近平国家主席を国賓として招くことを決めていた安倍政権にトランプ政権は怒り心頭だったといいます。もちろん、内政干渉になるために表立った抗議はしなかったわけですが、米国の怒りが表れたのが駐日米大使の人事。ハガティ前大使が上院選の出馬を理由に2019年7月に辞任してから、ずっと空席状態のままだからです。他の同盟国であればともかく、駐日大使が1年以上も決まらないなんて異例中の異例でしょう。今の米中関係はかつての米ソ関係よりも深刻と言われていますが、その中国と近しいのが二階幹事長です。大訪中団を率いて北京を訪問し、中国の最高指導部とも親しいですからね。二階さんが幹事長続投となれば、その二階さんに言われるがままの菅政権も中国を重視せざるを得なくなるでしょう。米国にとっては、それだけは避けたいわけで、『菅さんのリークを裏でけしかけているのは米国ではないか』なんて話もあるほどです」

 果たして菅新総裁は自分を首相に押し上げてくれた二階氏を幹事長に選ぶのか。続投させなければ二階氏自身が黙ってはいないし、続投させれば3派閥に加え、米国の反発も避けられないだろう。

 どっちにしても菅政権「短命」は間違いなさそうだ。

日刊ゲンダイ
2020/09/11 06:00
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