「県民に寄り添う」「できることは全て行う」−。安倍晋三首相は沖縄について、そう強調してきた。しかし、県内の各主要選挙や県民投票の結果を無視して辺野古新基地建設を強行。在任中、オスプレイなど米軍機の墜落のほか民間地への部品落下も相次いだ。辞意を表明した28日の会見は約1時間。自身の政策の成果や課題を語ったが「沖縄」に触れることはなかった。県民は「沖縄の心情を理解できる首相を」と求めた。

 「ついに辞めるのか」。夕方、那覇市内の停留所でバスを待っていた派遣社員の知花純一さん(42)=浦添市=は、安倍首相辞意のニュースを見て思わず声を上げた。体調不良なら仕方ないと思う半面、「森友、加計学園問題など、これまでにも辞めるべきタイミングはあった」と批判。一方、新型コロナウイルスの収束が見通せない中「うまくかじ取りできる人がいるのか」と不安視した。

 LINEのニュース速報で退任を知ったのは糸満市の主婦、上間未来さん(28)。「アベノマスクの評判が悪く、(政府の観光支援事業の)『Go To トラベル』はタイミングが微妙だったり。新型コロナ対策では目立った成果を感じなかった」として突然の辞意に少し驚いた様子。コロナ禍で営業を自粛する飲食店など「踏ん張って耐えている人の立場になり、補償を考えられる人に首相になってもらいたい」と望んだ。

 石垣市のタクシー乗務員の黒島純夫さん(73)は「病気でなくても辞めてほしいと思っていた」ときっぱり。理由は経済政策「アベノミクス」で、中小企業は何の恩恵も受けていないと憤る。コロナ禍で収入は減り、生活は厳しい。「コロナの収束は無理かもしれないが、せめて経済を立て直してほしい」と次のリーダーに注文を付けた。

沖縄タイムス
2020年8月29日 08:17
https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/623705