政府の観光支援事業「GoToトラベル」の開始から2週間が過ぎた。冷え込んだ旅行需要の起爆剤になると事業者は期待を膨らませたが、予約の動きは鈍く、「期待したほどの効果はまだない」と感じている。一方、新型コロナウイルスの感染再拡大により収束が見通せず、観光業者や宿泊業者からは「潮目が変わるきっかけがほしい」といった悲痛な声も上がる。

 「残念ながら、経済効果が出ているとは言えない」

 大手旅行会社「KNT─CTホールディングス」(東京都)の広報担当者はため息交じりに話す。

 7月の旅行予約人数は前年同期比8割減。「GoToトラベル」がスタートしてもほとんど変化がなく「期待したような上げ幅はない」と話す。

 観光庁が先月公表した主要旅行業者の旅行取り扱い状況速報(5月分)によると、国内旅行の総取扱額は前年同月比96・6%減。海外旅行については99・0%減の落ち込みようだ。企画旅行の取扱人数も、海外旅行は昨年の12万8千人に対して37人にまで激減。国内旅行も258万2千人が2万8723人にまで減少した。

 「GoToトラベル」は政府が需要喚起の中核と位置付けた事業であり、大打撃を受けた観光業への支援事業だ。同社広報担当者は「旅行業者として期待はあった」と話す。しかし、東京都の除外や政府の迷走などにより期待は失われていった。

 第一生命経済研究所の永濱利廣首席エコノミストは6月に行った試算で「事業が生み出す観光需要創出効果は1兆円程度」としていた。だが、東京都の除外が旅行マインドの低下を招いたとして、7月下旬に「効果は6千億円程度」とする試算の見直しを公表。「観光関連産業への恩恵は当初予定していたよりも限定的にとどまる可能性が高い」と結論付けた。

神奈川新聞 
2020年08月06日 21:24
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