西村コロナ担当相の2日の会見を見た人は驚いたに違いない。新型コロナウイルス感染拡大に対する政府の無策を棚に上げて、まるで国民を叱りつける口ぶりだったからだ。

 問題の会見が行われた2日は、東京都の感染者が2カ月ぶりに100人を超えた日だった。感染者数が3ケタを突破したことにピリピリしていたのか、西村氏はその日の会見中、ずっと眉をひそめたままだった。

 記者から「ホストクラブはダメだけど、居酒屋なら大丈夫という発想で盛り場の(感染)リスクを封じ込めるのか」と問われ、最初は淡々と答えていたものの、徐々にヒートアップ。

「しっかりと感染防止策を講じて経済活動との両立を図っていく。これができないなら、もう経済活動できません!」と、ややキレ気味に言い放った後、何かに取りつかれたような口調でこう続けたのだ。

「もう誰も、ああいう緊急事態宣言とか、やりたくないんですよっ! みんなで休業もやりたくないでしょ!」

 この突然の激高に、ネット上では〈イラついても仕方ないだろ〉〈何の対策すら示さず、逆ギレ?〉〈この大臣すぐ人のせいにするね〉――と批判が殺到。政府の無策に振り回されて、耐え難きを耐え、忍び難きを忍んできたのは国民である。西村氏に怒られる筋合いはない。コラムニストの小田嶋隆氏が言う。

「確かに、あの場面で怒るのはよくないし、大臣としての耐久力のなさの表れと言えるでしょう。しかし西村さんは、経済を立て直さなければいけない経済再生担当相も兼任しているので、感染拡大防止に専念できない難しい立場です。置かれた立場の難しさを考慮すると、キレてしまったのもうなずけます。裏を返せば、そんな立場に置いた安倍首相の見識の低さ、人事のデタラメさの証拠だと思います」

西村氏をコロナ担当相に任命した安倍首相といえば、先月17日の国会閉会以降、3日までに7回も政財界人と会食。3日は赤坂の高級日本料理店「もりかわ」(平均予算1人5万円=食べログから)で、葛西敬之JR東海名誉会長、北村滋国家安全保障局長と会食した。

 西村氏は国民に怒りをぶつける前に、コロナ対策そっちのけで会食三昧の安倍を叱り飛ばすべきだ。

日刊ゲンダイ
2020/07/04 13:30 
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