夫妻の逮捕容疑は公職選挙法違反(買収)の疑い。昨夏の参院選を巡り、計2570万円を地元関係者94人に配った買収容疑だ。原資は、党本部から夫妻の支部に渡った1・5億円だった疑いが濃厚だ。買収が手渡しだった場合、原資については、さかのぼっていく必要があり、特定が難しいが、口座からの「振り込み」ならば、カネの流れは「党本部→支部→スタッフの口座」だった疑いが強くなる。もし、案里容疑者の政党支部に、党本部以外から入金がなかったら、なおさらだ。
夫妻は配ったカネについて、「原資は1・5億円ではない」と否定し、買収そのものについても、「昨春の統一地方選の当選祝い」といった言い訳で否定している。しかし、克行容疑者は関係者にカネと案里容疑者のポスターを一緒に渡したり、配布時に「案里をよろしく」と伝えたことも報じられている。統一地方選に出馬しなかった議員にもカネを渡したという。「買収」は極めて濃厚だ。
「原資は1・5億円ではない」という釈明も到底、信用できない。政治資金に詳しい神戸学院大教授の上脇博之氏はこう言う。
「21日付の毎日新聞によると、案里氏側は提供された1・5億円を、昨年7月末にほとんど使い切っていたとされます。また、私の調べたところでは、案里氏が県議時代から持つ政治団体にはほとんど資金が残っていない。つまり、案里氏の支部の収入の大半は党本部からの1・5億円だったとみられます。当然、スタッフに振り込まれた200万円も、1・5億円が原資だった可能性があると考えられます」
克行容疑者から現金を受領した町議は、授受の際、克行容疑者に「安倍さんから」と言われたという。案里容疑者をなにがなんでも当選させたいという安倍首相の“ご意向”が働いたことで1・5億円が拠出されたなら、交付罪が成立する可能性もある。自民党本部も捜査する必要があるのではないか。
■河井陣営 愛知の市議らに応援報酬155万円
河井案里容疑者の陣営が、愛知県稲沢市の市議(49)と石川県の元県議(54)の県外者2人に、陣営スタッフとして活動した報酬として計約155万円を支払っていたことが分かった。30日の毎日新聞が報じた。
案里陣営には選挙に精通したスタッフが少ないことから、案里容疑者とともに逮捕された夫の前法相克行容疑者の秘書が市議らに応援を求め、市議は選対事務局長を務めた。
市議には6月上旬から8月中旬にかけて4回に分けて計約97万円が支払われた。元県議には7月上旬から8月上旬にかけて3回にわたり計約58万円が支払われたという。しかし、案里容疑者の選挙運動費用収支報告書に2人の人件費の記載はない。
日刊ゲンダイ
2020/06/30 14:50
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