森友学園をめぐる財務省の公文書改ざん事件に関連し、自ら命を絶った財務省近畿財務局の赤木俊夫さん。妻の雅子さんは国と佐川元財務省理財局長を提訴したが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、裁判開始は延期(初公判は7月15日に決定)。初公判を待つ雅子さんの胸中は揺れ動いた。

 ジャーナリストの相澤冬樹氏が、雅子さんと交わした膨大なLINEを初めて公開する。

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週刊文春WOMAN読者の皆さまへ

 元気な夫が突然うつ病になった。本屋に行ったらそんな名前の本がたくさん並んでいます。ある日本当にそんなことが自分に起きました。その本を読んでみても私の夫は何かが違いました。それは改ざんがあったからです。いまだに改ざんの真相はわかっていません。私はそれを知るために裁判を起こしました。

夫の手記公表後、雅子さんを取り巻く環境は一変

 これは赤木雅子さん(49)から読者へのメッセージです。この記事を書くにあたりお願いしたところ、20分ほどでたちまち書き上げLINEで送ってくれました。雅子さんの夫、赤木俊夫さん(享年54)は財務省近畿財務局で国有財産の管理を担当していました。

 3年前、森友学園への国有地の8億円もの値引き売却が発覚した時、取り引きをめぐる公文書の改ざんを上司に指示され、反対しても聞き入れられず、心ならずも改ざんさせられてしまいました。俊夫さんはそのことを苦にうつ病になり、休職中にさらに悪化して、2年前、命を絶ちました。死の間際に、知る限りの事実を「手記」として残しました。

 夫は真実を皆さんに知ってほしくて手記を書いたに違いない。雅子さんはそう感じていましたが、夫の職場の財務局は公表しないよう強く求めてきました。押しかけてくるマスコミも怖い。だから公表せずにいましたが、夫の死を招いた改ざんや、その原因になった国有地の巨額値引きについて、財務省はいつまでも真相を明らかにしません。

 そんな時、森友への国有地値引き問題を追及してNHKを辞めた私のことを知り、連絡をくれました。それから1年4か月。話し合いを重ねる中で、雅子さんはついに決断します。夫の三回忌を終えた今年3月18日、手記を週刊文春で公表し、改ざんを指示したと夫が手記で書いた佐川宣寿元財務省理財局長と国を相手に裁判を起こしました。すべては夫の死の真相を知るためです。財務省が説明しないのなら、裁判で説明させるしかないと心を決めたのです。手記の公表を週刊文春にしたのは、私がNHKを辞めた後、記事を書いていたからです。

 そして3か月、雅子さんを取り巻く環境は激変しました。日本中から共感と励ましの手紙やメールが(代理人の弁護士を介して)届きます。大勢の人が雅子さんのことを知るようになりました。同時にネット上には中傷とも受け取れる言葉も現れ、気持ちが揺れることもあります。それでも俊夫さんの無念を胸に前に進んでいます。その姿を、雅子さんと私の1000通に及んだLINEのやり取りなどを中心にご紹介します。

「相澤さん、毒盛る話はちょっと危険じゃないですか?」

 今年3月15日、手記公表と提訴の3日前。私は週刊文春に載せる記事の原稿を赤木雅子さんに送り確認を求めました。そこでは、俊夫さんが亡くなった直後、自宅を訪れた近畿財務局職員との次のようなやり取りを紹介していました。

《雅子さんの目の前で「赤木を殺したのは朝日新聞や!」と叫んだ職員もいた(注・直前に朝日新聞が改ざんについて初めて報じた)。でも雅子さんは「殺したのは財務省でしょ」と冷ややかに見ていた。「財務局で働きませんか?」とも持ちかけられたという。雅子さんは「佐川さんの秘書にしてくれるならいいですよ。お茶に毒盛りますから」と答えた。痛烈な皮肉に相手は沈黙した。》

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文春オンライン
2020/06/29
https://bunshun.jp/articles/-/38651