河井克行前法務大臣と妻の案里参議院議員が逮捕された選挙違反事件で、逮捕容疑となった買収資金のうち200万円余りが案里議員の自民党支部から陣営スタッフ数人の口座に振り込まれていた疑いがあることが関係者への取材で分かりました。検察当局は多額の買収資金の原資について実態解明を進めているものとみられます。

前の法務大臣の河井克行容疑者(57)と妻で参議院議員の案里容疑者(46)は、去年7月の参議院選挙をめぐって地元議員らに票の取まとめなどの選挙運動を依頼し、報酬として現金を配ったとして公職選挙法違反の買収の疑いで逮捕され、検察当局は合わせて94人におよそ2570万円を配った疑いがあるとみて捜査を進めています。

逮捕容疑となった現金の提供先94人の中には陣営スタッフも含まれていますが、このうち数人の口座に去年6月から8月にかけて、案里議員の自民党支部から合わせて200万円余りの違法な報酬が振り込まれていた疑いがあることが関係者への取材で新たに分かりました。

公職選挙法では、いわゆるウグイス嬢などを除いて選挙運動を行った人に報酬を支払うことを禁じていて、NHKの取材に対し、複数の陣営スタッフが自民党支部から報酬が振り込まれたことを認め、このうち1人は「当時は問題ないと思っていたが、今は受け取るべきではなかったと認識している」と述べました。

河井前大臣と案里議員の支部には参議院選挙の前に自民党本部から保守分裂の選挙を戦った当時の現職の10倍の合わせて1億5000万円が振り込まれていたことが明らかになっています。

関係者によりますと、1億5000万円の多くは広報誌を配布した費用や事務所の経費などに充てられたということですが、ウグイス嬢に法律の規定を上回る違法な報酬を支払ったとされる事件でも、案里議員の自民党支部の資金が報酬に充てられ、党本部からの資金の一部が違法な報酬の原資になっていた可能性もあるということです。

検察当局は多額の買収資金の原資についてさらに実態解明を進めるものとみられます。

関係者によりますと、河井前大臣は地元議員らの一部に現金を渡したことを認めたうえで、その原資については「自分の手持ち資金から出した。党本部からの1億5000万円は原資ではない」などと周囲に説明しているということです。

そして河井前大臣と案里議員は「現金の提供は票の取りまとめを依頼する趣旨ではない」などと容疑を否認しているということです。

NHKニュース
2020年6月29日 18時16分
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200629/k10012488041000.html