新型コロナウイルス感染拡大防止のため、テレビは苦肉の策で「リモート出演」を取り入れている。雰囲気がガラッと変わった画面に映し出されるコメンテーターやタレントたちの姿を、視聴者はどう受け止めているのか。

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 本誌は5月中旬から6月上旬にかけ、テレビ番組のリモート出演についてウェブアンケートを実施。111人から回答を得た。

 その結果、リモート出演に満足しているかという問いに「満足」と答えたのはわずか16%。「まあまあ」と答えた中間派も48%いたが、「不満」は36%と「満足」の倍以上だった。何かしらしっくりこないと感じる人が多いようだ。

 一方で、視聴率は伸びている。ビデオリサーチ社によると、今年4月は前年同月を上回る視聴率(関東地区)で、特に正午から夕方6時までの間で10ポイント程度上昇していたという。

「在宅時間が長くなり、視聴率のベースが上がっていると思われます。よく見る番組ジャンルの調査では、『ニュース・報道番組』や『情報バラエティー』がトップ。コロナへの関心の高さがうかがえます」(ビデオリサーチ コーポレートコミュニケーション室)

 しかし、高視聴率の裏で、本誌のアンケートでは報道系の番組に出演するコメンテーターたちへの厳しい声が目立った。<コメンテーター間の緊張感が生じず、迫力不足><出演しなくてもいいような人はリモートにしてまで出なくてよい>といったものだ。元毎日放送プロデューサーで同志社女子大メディア創造学科教授の影山貴彦氏がこう語る。

「こうした災害時、最も安直に数字をとれるのが報道系の番組。専門家さえ押さえれば回っていくからです。一番の問題は、元々スタジオに呼ぶ必要も感じられないのに、わざわざリモートで出演させているようなコメンテーターが多い点。業界の慣行で、芸能プロダクションへの忖度が人選に影響している。中身のないコメントの薄っぺらさが視聴者に見透かされています」

 厳しい意見がある中、リモートを取り入れる番組で人気を集めたのは、テレビ朝日系「羽鳥慎一モーニングショー」やTBS系「サンデーモーニング」だ。信用できるコメンテーターでも、モーニングショーの出演者であるテレビ朝日社員の玉川徹氏(15票)や、両番組に出演するジャーナリストの青木理氏(12票)が上位に入った。

 玉川氏を選んだ理由にあがるのは、<政府に遠慮せず発言してくれる><良くも悪くも率直にコメントしている><間違いがあった時には自分の言葉で謝罪していた>といった回答。一方、青木氏に対しては<権威権力に忖度しない><歯に衣着せぬ物言い><話の内容に一貫性と論理性がある>など。アンケート結果でも、リモートの出演者に最も求めるものは「いつも通りに出演する安定性」や「優れたトーク力」。権力にこびず常にズバッと持論を述べる二人の姿勢にも通じる。ちなみに、両番組に出演し、コロナ対策への歯に衣着せぬ発言で注目される岡田晴恵・白鴎大学教授はランク外。<急にワッと持ち上げられていて、本人というよりもその持ち上げられ方に不信感を抱いてしまった>という意見もあった。(本誌・岩下明日香)

※週刊朝日  2020年6月19日号
2020/6/12 08:00
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