★国内の政治報道ならば首相・安倍晋三の発言を会見で示されれば記者はそのまま書く。だがG7電話会議となれば各国が取材をして各首脳がどう話したか、各国はどう反応したか、複合的に確認することができる。読売新聞によれば電話会談後、首相は記者団に東京オリンピック(五輪)・パラリンピックについて「『人類が新型コロナウイルスに打ち勝つ証しとして、完全な形で実現することについてG7の支持を得た』と述べた。記者団から五輪の開催時期を問われたが、言及は避けた」とある。

★また、ANNニュースでは「このコロナウイルスとの戦い、大変手ごわい相手ではあるが、G7でしっかり結束して、国際社会で共に戦っていけば必ず打ち勝つことができるという認識で一致した」と述べたとある。ところがCNNによればニュアンスが違う。「安倍首相は五輪の延期や中止には強く抵抗し、目標は“予定通りに開催することだ”と語った」となり、一方、クドロー米国家経済会議委員長は、首相は「(東京五輪の延期、中止が)世界におけるリーダーシップの問題につながると考えており、トランプ大統領は彼に幸運を願った。我々全員が彼の考えを支持している」と発言しているが、ここあたりは首相の理屈に近い。

★首相は予定通りの開催をG7の強い願望のようにも言うが、米トランプ大統領は使い分けているようで同日の会見では「10人以上の集会や不要不急の旅行、レストランやバーでの飲食を避けるべき。米経済がリセッション(景気後退)に陥る恐れがある」などと発言するとともに「(ピークは)7月か8月という声が出ている。そのくらいになるのかもしれない。こうした言葉は嫌いかもしれないが、(ピークが)押し寄せるかもしれない」と今までの過小評価を修正している。首相は世界の首脳が五輪の予定通りの開催を希望しているというものの、各国首脳は国民には慎重論を語る。発言を多角的に読み込まないと大きな間違いにはまり込みかねない。(K)※敬称略

日刊スポーツ
2020年3月18日8時23分
https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202003180000051.html