防衛省の変更案では、海底に広がる軟弱地盤の改良工事に伴い、工期は倍の十六年、費用は当初計画から三倍近い九千三百億円にまで膨らんだ。米軍普天間(ふてんま)飛行場(宜野湾(ぎのわん)市)の返還が三〇年代にずれ込むことから「計画を見直すべきだ」との批判が高まっている。
有識者会議は委員八人からなる「技術検討会」。土木工学など専門的見地から技術的な助言を得るため、防衛省が委員を選んで一九年九月に設置した。半数は旧運輸省OBの大学教授ら政府系出身者で占められ、審議の中立性や客観性に当初から疑問が出ていた。
奨学寄付金は民間から大学を通じて学部や教授らに提供される。寄付を受けていたのは副委員長の大谷順・熊本大副学長が百二十万円、青木伸一・大阪大院教授が三百万円、渡部要一・北海道大院教授が百五十万円。「東洋建設」(東京)や「不動テトラ」(同)が寄付していた。
渡部氏は護岸建設を受注した準大手ゼネコンの関連財団からも五十万円の寄付を受けていた。
一四年度以降、防衛省沖縄防衛局が発注した辺野古関連工事のうち、東洋建設は共同企業体(JV)で、埋め立て工事など四件計百六十五億円分を受注。不動テトラはJVで護岸建設一件四十億円分を受注した。
取材に応じた委員や防衛省は「議論に影響を与えるとは考えていない」と述べ、関連性を否定した。
辺野古の工事では、環境面で専門家から助言を得る防衛省の「環境監視等委員会」で五年前、四人の委員が建設業者から寄付金を受けていたことが批判され、寄付金を自粛するルールを設けた。しかし、防衛省は今回、「各委員の研究活動を逐一把握する立場にはない」として寄付金の有無を確認していないという。
本紙は技術検討会の八委員のうち、情報公開制度のある大学や法人に属する六人について開示を求めた。開示手続き中の防衛大や公開制度のない私大に属する三人には直接、問い合わせたが、回答はなかった。
河野太郎防衛相は先月の技術検討会の後、有識者の了承が得られたとして工事変更案に沿って辺野古移設を進めると表明した。
◆「利益相反」の可能性
<尾内隆之・流通経済大教授(政治学)の話> 利害関係によって公正な判断がゆがめられたり、その恐れが懸念される「利益相反」状態に当たるケースだ。専門家から客観的な助言を受けるための会議なのに、客観的な審査が行われているのか疑わしい。辺野古移設は政府と沖縄県が対立しており、政策決定はより公正な判断が求められる。社会に納得してもらうには委員選任の経緯や資金提供の有無を常に公表し、透明性を高めるべきだ。
<奨学寄付金> 研究振興のため民間から大学などに寄付される資金。使い道が限定されていないのが特徴で、欧米にはない。大学への交付金が減少する中で貴重な研究資金となる一方、産学の癒着の温床になりやすい。
東京新聞
2020年1月3日 朝刊
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