とはいえ、大半は野党攻撃。参院で国会規則に基づく野党の予算委員会開催要求を2カ月以上も拒んだことを棚に上げ、「この1年、国会の憲法審査会は参議院ではたった3分しか開かれていない」「一部の野党は、議論にすら応じていない」とあげつらう。老後2000万円不足で火がついた“鬼門”の年金問題を隠したくて、たまらないのだろう。
安倍首相の持論を基に自民党がまとめた、自衛隊を憲法に明記する9条改正など「改憲4項目」を説明するマンガも作成。破格の20万部も発行し、有権者に配るという。
ファンシーな画風で安倍自民の理想である「3世代家族」に、「GHQは(今の憲法を)たった『8日間』で作ったんだ」「私たちの家のルールをご近所さんが考えるようなものよね?」と“押しつけ憲法論”や、「(自衛隊が)憲法違反であるというレッテルを貼られ続けることはおかしくない?」「堂々と憲法で認めることはできないのかねぇ」と“自衛隊違憲論”などを語らせる。
そして自衛隊を憲法に明記しても「私たちの生活は特に変わらないよ」と言わせるが、9条2項の交戦権否認規定の空文化との批判には答えようとしないのだ。
「いくら安倍首相があおっても改憲機運は盛り上がりません。多くの国民が自衛隊の災害活動などに好感を持ち、その存在を違憲とは考えぬ中、拙速な憲法明記の必要性はないからです。世論調査でも参院選で重視する政策は『年金など社会保障』が断トツで、憲法改正はほぼ1桁台。老後不安の解消こそ有権者の願いです。それでも首相が自衛隊明記にこだわるのは9条2項を否定し、米国と軍事行動を共にしたいからとしか思えません。それこそトランプ大統領が過去6カ月伝えたという安保条約の“片務性”への不満を解消させたいだけではないですか」(立正大名誉教授・金子勝氏=憲法)
改憲の争点化もダダすべり。これだけ首相が国民の意識と乖離している弊害は大きすぎる。
日刊ゲンダイ
19/07/03 06:00
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