2019年4月、昨年末に改正された入管法の施行による外国人労働者の受け入れ拡大が迫っている。

日本は「移民」が少ない、日本は「移民国家」ではない、外国人労働者の受け入れは「移民政策」ではない——そんな言葉とは裏腹に、現実に存在するこの国では、日本人の人口が減少し続ける中で在留外国人が「300万人」の大台を目前とするまでに増加してきた。

この問題をどう考えればよいのだろうか。発売前から話題の新刊『ふたつの日本――「移民国家」の建前と現実』(講談社現代新書)を上梓した「ニッポン複雑紀行」編集長の望月優大氏に聞いた。

■誰が「日本の労働力不足」を担うのか

いま、なぜ「移民」の話をしなければいけないのか。

ひとつには、この国の労働力不足があります。少子高齢化・人口減少が進み続ける中で、誰がその深刻な不足を補ってきたでしょうか。

AI(人工知能)やロボットなど、技術や機械の力で人間の代わりができるから心配はいらない——テクノロジーに精通している人からそうした未来が語られることもあります。

では「AIが人間を代替し、BI(ベーシックインカム)で働かない人にもお金を与える」——こうした世界はいつになったら到来するのでしょうか。

少なくとも今は実現していないし、今後数年のうちに実現する話だとも思えません。そもそもそれが実現すべき未来なのかについても議論があるでしょう。

では、流行りの議論の背後で実際に起きていたことは何なのか。

それは、日本人の労働者が足りないところをますます多くの外国人労働者で埋め合わせてきたという生々しい現実です。

いま日本では、外国人労働者があらゆる産業で働いています。

コンビニや居酒屋(第三次産業)、コンビニ弁当を作る工場(第二次産業)、その弁当に入っている野菜や魚をつくる農業や漁業(第一次産業)……それらの仕事をすべて技術や機械で代替できるのでしょうか。

大切なことがあります。それは、ある仕事が技術的に代替できるかということと、その新技術や機械を実際に購入して利益が出るのかという経済的な実現可能性とはまったく別の話だということです。

そこで比べられるのは、人間の値段と機械の値段です。

もちろん、技術的な可能性はどこまでも広がっています。しかし、店舗を無人化する仕組みも、農業や介護をロボット化する仕組みも、人を雇うよりも安い場合にのみ投資の判断がなされます。

経営者は利益を求めるのであって、その手段が安い機械であっても安い労働者であっても本質的には違いがないわけです。

2につづく

現代ビジネス
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