菅義偉官房長官は15日の記者会見で、毎月勤労統計の調査手法の変更について、2015年3月に厚生労働省幹部から報告を受けていたことを明らかにした。野党側は、統計不正の背景に、アベノミクスの成果を強調したい首相官邸の意向があるとみて、安倍晋三首相も出席する18日の衆院予算委員会集中審議で徹底追及する構えだ。

 菅氏は「記憶が定かではない」と断った上で、「当時の秘書官に聞いたところ、(調査対象事業所の全数入れ替えで)数年ごとに調査結果に段差が生じることに関し、厚労省から統計の専門家の意見を聞くことを検討する旨の説明を受けた」と語った。
 勤労統計は18年1月分からデータ補正を公表せずに行い、賃金が上振れした。

 15日の衆院予算委で野党は、菅氏が報告を受けたのとほぼ同じ時期に厚労省側に「問題意識」を伝えた首相秘書官(当時)の中江元哉財務省関税局長の認識をただした。
 中江氏は15年3月31日、厚労省の姉崎猛統計情報部長(当時)らから、調査対象事業所の入れ替えに伴い、統計数値が大きく変わると事前説明を受けた。その際「経済の実態がタイムリーに表せないとの観点から、どうして全数入れ替え方法をとっているのか」と問題意識を伝えたことを認めた。一方で「当然の反応をした。不適切な方法をとらせる意図ではない」と、厚労省に対する圧力との見方を否定した。
 厚労省は、官邸への報告から2カ月余り後の15年6月、「毎月勤労統計の改善に関する検討会」を発足させた。検討会の議事録によると、姉崎氏は「アベノミクスの成果ということで、賃金の動きが注目されている」と発言。中間的整理をまとめた同年9月の検討会では「部分入れ替え方式を検討したい」と主張した。検討結果について、中江氏は「報告を受けた記憶はない」と語った。
 国民民主党の後藤祐一氏は、麻生太郎副総理兼財務相が同年10月の経済財政諮問会議で、勤労統計の調査手法改善を求めたことに触れ、中江氏が事前に財務省に問題意識を伝えたかをただした。中江氏は否定したが、後藤氏は「信用に足らない」と断じ、麻生氏に関係者への聞き取りを要求。麻生氏も受け入れた。
 国民民主の原口一博国対委員長は記者団に「(首相秘書官に)統計をねじ曲げる力はあり得ない」と指摘、集中審議で首相を厳しく追及する考えを示した。

時事通信
2019年02月15日20時06分
https://www.jiji.com/jc/article?k=2019021501203&;g=pol