これまで、都内の500人以上の事業所への調査で不正があったことが分かっているが、きのう(21日)、500人未満の事業所への調査手法にも不自然な点があることが発覚した。厚労省は18年から突然、「調査対象事業所の選び方」を変え、なぜか「数値の補正処理」もやめているのだ。その結果、毎勤の賃金が不自然に上昇している。どうやら発端は、麻生財務相の“大号令”だったようだ。
15年10月16日の経済財政諮問会議で、麻生財務相は毎勤の調査手法にこう文句をつけていた。
「(調査対象の)サンプル(事業所)の入れ替え時には変動があるということも、よく指摘されている」「具体的な改善方策を早急に検討していただきたい」――。ちょうど、アベノミクスが始まった後の数字が悪化した時だった。
「厚労省は、従業員500人未満の事業所については、毎勤のサンプル事業所を約3年ごとに“全て”入れ替えてきました。その上で、過去に遡って数値の補正処理をかけていた。その結果、12年末の安倍政権発足後の数字が下振れしたのです。恐らく麻生大臣はそれが気に入らなかったのでしょう」(霞が関関係者)
麻生大臣から文句をつけられたからなのか、厚労省は18年からは調査手法を一変。サンプルの「総入れ替え」を「一部入れ替え」に変更し、「補正処理」もやめてしまったのだ。
サンプルの「総入れ替え」をやめると、毎勤の賃金上昇につながる可能性があるという。「数年間にわたり調査していると、業績が悪い事業所は回答を控えるようになる。結果的に、業績好調な企業のみが残る傾向にある」(厚労省関係者)からだ。
調査手法変更は、「賃上げ」が実現できないアベノミクスの失敗をゴマカすため、麻生氏がハッパをかけたことが原因だったのではないか。国民民主党の山井和則衆院議員はこう言う。
「基本的に、統計の調査手法などについては、精度向上のため各省庁の専門家が議論すべきことです。それを、財務大臣が提言するというのは異例のことでしょう。麻生大臣の発言の是非はともかく、結果的に調査手法変更で不自然に数値が上昇したのは、厚労省の安倍政権への“忖度”によるものではないか。徹底解明すべきです」
やはり、霞が関官僚の視線の先には「官邸」しかいないのだろう。
日刊ゲンダイ
2019/01/23
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