2018.03.01
金正恩はどこで間違えたか...米朝会談歴史的失敗の「3つの理由」
そして気になる、こんな「予告」
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/60190?page=4
2016年5月に、金正恩委員長は第7回朝鮮労働党大会を開き、「核建設と経済建設」という「併進政策」を採択した。ところが前述のように、
トランプ大統領とのシンガポール会談に臨むにあたって、2018年4月20日に朝鮮労働党第7期中央委員会第3回総会を改めて開き、
「経済建設」のみに路線変更した。
その際、金委員長は、「核建設は成功裏に完了したから、これ以上開発する必要がない」という方便を用いた。後に伝え聞いた話によれば、
金委員長は朝鮮人民軍の幹部たちを集めた席で、「これまで生産した核やミサイル兵器は絶対に廃棄しないから、路線変更させてもらう」
と断りを入れたという。
それでも私は、第3回総会の「2つの決定」を読んで、愕然とした。「先軍政治」(軍最優先の政治)を貫いた金正日時代では考えられなかった
「軍軽視」が顕著だったからだ。これでは、いつ軍のクーデターが起こっても不思議ではないと思った。

昨年12月20日、能登半島沖において、警戒監視中の海上自衛隊第4航空群所属のP−1哨戒機が、韓国海軍の駆逐艦から火器管制
レーダーの照射を受けるという重大事件が起こった。この事件の真相はいまだ解明されていないが、1月末のこのコラムで詳述したように、
ある韓国の関係者は、私に次のように証言した。
「金正恩委員長が『元山葛麻海岸観光地区』を視察中(注:朝鮮中央通信は昨年11月1日に金委員長の視察を報じている)、朝鮮人民軍に
よる暗殺未遂事件が発生した。金委員長は一命を取りとめ、主犯格の軍人たちの大半は、ひっ捕らえられて処刑された。だが、そのうち
5人だけは逃亡した。その5人が軍の船を乗っ取って、日本に向けて亡命を計った。
そのことを知った北韓(北朝鮮)当局は騒然となり、自分たちでは追いきれないため、ホットラインを通じて文在寅政権に、拿捕を依頼した。
そこで韓国は、海洋警察庁の警備艦はもとより、韓国海軍が誇る駆逐艦『広開土大王』まで繰り出して、日本海一帯を捜索した。
こうした韓国側の不審な行動をキャッチした自衛隊は、P−1哨戒機を発進させ、偵察に向かった。韓国側は、この『隠密行動』の目的が
発覚したり、北朝鮮船が日本に渡ったら、大きな国際問題になると恐れた。そこで非常手段として、自衛隊の哨戒機を追っ払うため、
レーダー照射を行った。
逃亡を図った朝鮮人民軍の兵士5人は、一人がすでに死亡していて、残り4人は飢餓状態にあった。そこで4人の緊急手当てをした上で、
翌日、板門店まで連行して、北韓(北朝鮮)側に引き渡した」
その後、日本の防衛幹部にも、この説を確認したが、「いろいろ検討したが、その説が一番有力に思う」と答えた。つまりそのくらい、
現在の金正恩委員長と朝鮮人民軍は「緊張関係」にあるのである。

今回、なぜ金委員長は計50時間近くもかけて、陸路でベトナムまで行ったのか。また、前回のシンガポール会談の時は、なぜ距離的には
十分、自分の専用機で行けるのに、わざわざ中国に政府専用機を借用したのか。
私には、金委員長が、朝鮮人民軍による専用機爆破を恐れているからとしか思えない。金委員長の専用機を管理しているのは、
朝鮮人民軍空軍なのだ。
こうした事情から、「トランプに安易な妥協はしないでいただきたい」という朝鮮人民軍の強いプレッシャーが、金委員長の双肩に重くのしか
かっていたのではないか。