来年に東京五輪を控える日本オリンピック委員会(JOC)と政府に衝撃が走った。

 フランスの検察当局は11日、2020年の東京五輪の招致を巡る贈収賄疑惑でJOCの竹田恒和会長(71)の訴訟手続きに入った。

 そもそも竹田会長とはどんな人物なのか。

 1947年、旧皇族竹田宮恒徳王の三男として生まれた。慶大出身で72年ミュンヘン、76年モントリオール五輪は馬術の日本代表で出場。ロスやバルセロナ、ソウル五輪は選手団コーチや監督を歴任。五輪との関わりは長いが、元JOC関係者は、「今回の疑惑は竹田会長の指導力不足が主因です」と、こう続ける。

「JOCは91年、体育協会から完全独立した。80年のモスクワ五輪は政治介入でボイコットをしたが、その悲劇を繰り返さないためでもあった。独立時の国際委員会のトップは国際卓球連盟会長の荻村(伊智朗)さん。メンバーには国際アイスホッケー連盟理事の冨田(正一)さんら、国際通が集められ、五輪招致活動をリードするため世界を飛び回り、独自の人脈で情報を集めた。結果、98年長野五輪招致に成功した。当時のメンバーで一番の若手は40代半ばの竹田さんだった。オリンピアンといっても旧皇族の宮さまですからね。父はIOC委員でしたが、竹田さんは誰かがお膳立てしないと何も仕事ができなかった。ソ連が崩壊して誕生した国にも情報集めとパイプづくりに人を出した。竹田さんはカザフスタンに行ったときもひとりでは何もできず、すべて職員が準備していたと聞きました」

■安倍首相にまったく頭が上がらない

 そんな宮さまがなぜJOC会長になれたのか。

「全日本スキー連盟専務理事の八木(祐四郎)会長が亡くなり、皇室好きで知られる初代会長の堤(義明)さんが反対派を抑え、竹田さんを推したのです。しかし、竹田さんはJOC会長として何がしたいのか、JOCは今後どうあるべきかというプランを提示できず、スポーツが平和貢献するための具体策もなかった。20年東京五輪も招致委員会は広告会社に戦略を丸投げする形になり、国のバックアップで成功したようなもの。だから竹田さんは安倍首相にまったく頭が上がらないのです」

 昨年11月にはこんなことがあった。都内で各国オリンピック委員会連合(ANOC)総会が行われ、世界206の国・地域、約1400人の委員が集結。冒頭の安倍首相の挨拶が終わると、次にスピーチするはずの竹田会長は安倍首相の“お見送り”で場内から消えていた。IOCのバッハ会長が前倒しで登壇し、「JOCを代表しご挨拶します」と皮肉タップリに切り出して場内は大爆笑。政治家にペコペコするJOC会長に多くの委員たちがあきれ顔だった。

 勝利至上主義の病に侵された国内の競技団体に苦言を呈するどころか、ジュニア育成に多額の資金を投じ、それを煽るJOC。存在意義さえ問われている今、こんな会長では組織が正常に機能しない。これからJOCはどうなるのか。スポーツライターの津田俊樹氏が言う。

「かつての自民党のように、JOCも昔は内部で意見のぶつかり合いがあった。今の役員は自分の競技団体のことばかり考え、国際感覚も欠如している。スポーツと政治は別物といわれるが、それは建前。実際は切っても切り離せない関係です。JOC会長は政治とケンカできるだけの器のある人物でなければいけない。しかし、今のJOCにそんな人物は見当たらない。東京五輪というビッグイベントが終われば、『いずれ日本スポーツ協会(旧体協)に戻るのではないか』という声もある。それも一つの手ではないか」

 10期目に入っている竹田会長は政治家にベッタリ。「昔よりレベルが上がったのは仕事力ではなく、英会話だけ」(前出の関係者)とも言われている。東京五輪が終わったらJOCは「店じまい」した方がいいかもしれない。

日刊ゲンダイ
2019/01/12
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/sports/245350/