安倍政権が米空母艦載機の陸上離着陸訓練(FCLP)の移転候補地である馬毛島(鹿児島県西之表市)を、地権者から160億円で購入することを9日に決め、波紋を広げている。従来の土地評価額に100億円以上も上乗せして米軍施設を整備する異例の“厚遇”の一方、市独自の「夢のプラン」を握り潰す気だ。

 FCLPは艦載機が陸上の滑走路を空母の飛行甲板に見立てて離着陸を繰り返すため、大騒音を伴う。現在は硫黄島(東京都)で行っているが、2011年の日米合意で代替地として馬毛島が明記された。

 政府は当初、土地評価額45億円を提示。地権者が求めた額とは10倍近い開きがあり、交渉は長年にわたって難航していた。それが急転直下、交渉がまとまったのは、米国にせっつかれたからだ。

「硫黄島は艦載機が拠点にしている山口県の米軍岩国基地から1400キロも離れており、長距離移動でパイロットへの負担が大きい。一方、馬毛島なら基地から400キロで、移動にかかる負担は激減します。米政府高官が『もっと近くならないのか』と菅官房長官に再三迫っていた。焦った菅長官が購入価格の上乗せを先導したといいます」(永田町関係者)

■「宇宙船」着陸場建設まで計画

 しかも、安倍政権は島購入について市に一切の事前説明をしていない。馬毛島から西之表市の中心部までの距離は約12キロ。住民から「被害が不安」「事故があったらどうするんだ」といった声が上がっているにもかかわらず、だ。

 そもそも、市は17年3月から独自に「馬毛島利用計画」を練り上げている真っ最中。八板俊輔市長を中心に、宇宙関連事業や島での体験活動実施などについて検討してきた。

 宇宙関連事業では、ナント、島に宇宙往還機の着陸場建設を見据えているのだ。実際、経産省やJAXAへの要請活動も行っている。市に問い合わせると「実現性などについて市議会でご指摘をいただいているが、より良い計画になるよう検討している」(企画課)という。八板市長も「馬毛島にはFCLP以外にふさわしい利用の仕方がある」と表明したほどだ。

夢の計画を国が勝手に潰していいのか。

 西之表市議の長野広美氏が言う。

「宇宙関連事業は非常に夢のあるものですし、体験活動などは馬毛島の貴重な自然と触れ合うことができる魅力あるものです。市民の利益に資する計画をむげにする国の決定をとても許すことはできません。そもそも、市議会としても馬毛島での軍事施設建設に『反対』の決議をしています。国の決定は地方自治を破壊する行為です」

 相変わらず“アメリカファースト”のポチ政権だ。

日刊ゲンダイ
2019/01/12
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