「不退転の決意で臨む」。小川氏は同日午前、福岡県宗像市で知事選について記者団にこう強調。午後には、北九州市でも「そういう決意で臨みたい」と力を込めた。
記者会見で立候補の意思を問われるたび「任期を全うすることしか考えていない」とけむに巻いてきた小川氏。唐突な出馬表明は、2年前の衆院福岡6区補欠選挙を境に関係が悪化した県連の候補者選考と密接な関係がある。
県連は15日の選挙対策委員会で、知事選の推薦候補を公募で決めると決定。過去2度の選挙で支援した現職の小川氏を優先しないことに、県議会内では「小川氏を候補に選ばないための方策では」との臆測も広がったが、知事周辺は「自民の推薦はのどから手が出るほどほしい。手を挙げるしかない」と受け止めた。
公募期間は県議会12月定例会の閉会翌日の21日から28日まで。同定例会で自民が知事選の質問を封印したこともあり、県幹部は「議会会期中の出馬表明は難しい。閉会直後の会見で表明してから、公募に応じるのでは」とみていた。
この日の表明を事前に知っていた人物は県庁内にはいない。知事側近は「まったく予想していなかった」と驚きを隠さない。
だが、小川氏はある相談相手と頻繁に連絡を取り合い、慎重に表明時期を探っていた。県内外の政財界に幅広い人脈を持ち、小川氏が議会対応などで行き詰まったときに指南役となってきた人物だ。
数日前、出馬表明時期を相談してきた小川氏に、この人物は返した。「16日に菅義偉官房長官に会ったときしかない」。そして小川氏に手渡したメモにはこう書かれていた。「不退転の決意」
菅氏は、麻生太郎副総理兼財務相と並ぶ安倍政権の中枢。その菅氏の「後ろ盾」をアピールしつつ、「どんなことがあっても引くことはない」との姿勢を見せれば、県連も小川氏をむげにはできない−。それがこの日を選んだ理由だ。
ただ、小川氏が菅氏の「お墨付き」を強調したことは、独自候補擁立を模索する麻生氏を刺激するのは確実。県連との関係が一層悪化する可能性もあり、小川氏の思惑通りに事が進むかは見通せない。
=2018/12/17付 西日本新聞朝刊=
2018年12月17日 06時00分
https://www.nishinippon.co.jp/nnp/unified_local_election_fukuoka/article/473557/