ベトナムの外国人技能実習生の来日を巡り、受け入れ企業を支援する監理団体が、現地の送り出し機関から不正な手数料(マージン)を受け取るケースが横行していることが、関係者への取材で明らかになった。1人当たり10万円以上に及び、実習生の来日費用に上乗せされている。現地で受ける接待費用も、実習生の負担になっているという。監督権限を持つ外国人技能実習機構も、こうした海外での行為を把握するのは難しい。

 ベトナムの送り出し機関で働く30代の日本人男性によると、送り出し側からマージンの提供を申し出たり、監理団体が要求したりする。実習生1人当たり10万〜15万円が相場で、実習生が支払う手続き費用などに上乗せされる仕組みだ。

 実習生は来日前に送り出し機関で、日本語などの教育を受ける。だが、採用が決まらないと長期間とどまることになり、その分だけ手続き費用がかさむ場合もある。実習生を早く来日させたい送り出し側は、監理団体にマージンを渡して採用を依頼。監理団体から要求することもあり、この男性は「要求されたが断ったことがある」と語る。

 一方、現地での打ち合わせの際、送り出し側が監理団体や企業を接待することもある。食事やカラオケに加え、酒席などに女性を呼ぶこともあるという。接待費用も実習生が背負うことになるというが、男性は「マージンや接待は習慣化している面もある」と明かす。

 同機構は昨年11月以降、4万社以上の受け入れ企業と、約2300の監理団体の実地検査を進めている。ただ、検査は今年9月末現在で4000企業・団体にとどまる。

 技能実習制度に詳しい神戸大大学院国際協力研究科の斉藤善久准教授(ベトナム労働法)は「今の制度で現場の問題を把握するのは不可能だ。民間ではなく、国が受け入れ業務を積極的に担い、実習生のその後の生活支援にも力を入れるべきだ」と指摘した。【田中謙吉】

毎日新聞
2018年12月5日 22時09分
https://mainichi.jp/articles/20181205/k00/00m/040/294000c