「議論のない業界は滅びる。『民主化』は役目を終えていない」。宮城県塩釜市でワカメ養殖を手がける赤間廣志さん(69)は憤る。東日本大震災の翌2012年、宮城海区漁業調整委の委員に初めて立候補し、現在2期目だ。
当時、県が漁業権を民間企業にも開放する復興特区構想を進めていた。赤間さんは「被災直後に進めるべきではない」と考え、長く無投票だった委員選挙で議論を促そうとした。結局、選挙は無投票で復興特区も実現したが、「選挙をなくすのは言語道断だ」。
岩手県陸前高田市で、海底に仕掛けた刺し網で漁をする菅野修一さん(65)も改正案を心配する。同県は15年、資源保護などを理由に刺し網でのサケ漁を不許可に。同じ立場の計90人で、県に解禁を求める訴訟をしている。「選挙がなくなれば、今まで以上に弱い漁師の声が届かなくなるのでは」
漁業の民主化をうたった現在の漁業法は49年にできた。民主化の具体策が、全国64の海区ごとにある漁業調整委員会だ。選挙で選ぶ9人の委員と知事が選ぶ6人からなり、漁業権や漁場計画について都道府県知事の諮問に答申する。4年ごとに改選され、漁業者同士による利害調整を担ってきた。
水産庁は、戦後期の有力者によ…
朝日新聞
2018年12月6日7時17分
https://www.asahi.com/articles/ASLCV74C0LCVULZU019.html