関西地方を襲った台風21号に続いて発生した、北海道の大地震。この地震の影響で総裁選は告示日(7日)から3日間の活動自粛を余儀なくされ、候補者同士の討論会も中止。災害対応を考慮すれば、石破陣営の主張した「総裁選日程延長」がスジでも、石破元幹事長との政策論争から逃げる安倍首相にとっては“渡りに船”だろう。

 ただ、深刻な災害が立て続けに起きたことで、石破氏の掲げる「防災省創設プラン」が注目を浴び始めている。

 防災省の設置は、石破氏の肝いり政策だ。目的は「防災の専任大臣やスタッフを置いて防災知識の蓄積や共有を図ること」。自治体や 市区町村ごとでバラバラになっている防災体制を一元的に整えるというプランだ。

 一方の安倍首相は、総裁選で「国土強靱化を進める」などとブチ上げているが、西日本豪雨の最中に議員宿舎で行った飲み会「赤坂自民亭」で既にミソをつけている。東北や西日本、北海道といった被災地の党員らが、口先だけの安倍よりも「石破の方がマシ」と考えたとしても不思議じゃない。政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏は「防災対策が総裁選における最大のテーマ」とした上で、こう続けた。

「自然災害は国民の生命・財産を奪う“有事”です。各自治体でバラバラの災害対応を一元化する、また、縦割りの防災予算を国としてまとめるといったことを考えるならば、防災専門の組織再編は必須。石破さんが防災省創設という論点を投げかけ議論することで、被災地の共感を得る可能性はあります」

■災害の「後始末」専門では無意味

 とはいえ、石破氏のプランが現実的かどうかは別問題だ。立命館大学環太平洋文明研究センター教授の高橋学氏(災害リスクマネジメント)がこう指摘する。

「石破さんの唱える防災省が、単に災害の『後始末』専門の省庁では意味がない。防災で大事なのは、どんな災害にも強い都市計画を実現すること。災害に強い『街づくり』をできる省庁が必要なのです。現場で災害対応をしている消防署や警察、自衛隊といった組織を根本的に見直す覚悟があるなら、石破さんのプランは評価できます」

「地方票で圧勝する」――。石破氏は息巻く安倍陣営の鼻っ柱を防災対策で叩き折れるか。

日刊ゲンダイ
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