安倍首相が3選を狙う自民党総裁選(9月7日告示、20日投開票)の10日後に実施される沖縄県知事選(9月13日告示、30日投開票)。県民世論を無視し、米軍普天間基地の辺野古移設に突き進む安倍政権は、知事奪取に向け死に物狂いだ。迎え撃つ“翁長陣営”は自由党の玉城デニー衆院議員の擁立に動き、「オール沖縄」の再結集を急ぐ。そうした中、安倍自民がピリピリしているのが、国民的人気歌手の安室奈美恵(写真・AP)の動向だ。

 9月16日に歌手活動を引退する安室は、存命中の翁長雄志知事から5月に県民栄誉賞を贈られた。翁長の急逝に接すると、追悼文を発表。その内容は真情あふれるものだった。

〈県民栄誉賞の授賞式でお会いした際には、お痩せになられた印象がありました。今思えばあの時も、体調が優れなかったにも関わらず、私を気遣ってくださり、優しい言葉をかけてくださいました。沖縄の事を考え、沖縄の為に尽くしてこられた翁長知事のご遺志がこの先も受け継がれ、これからも多くの人に愛される沖縄であることを願っております〉

所属レコード会社に促されたわけではなく、安室サイドが自主的に発したものだという。

「ハッとさせられたのが、〈翁長知事のご遺志がこの先も受け継がれ〉というくだりです。安室さんが辺野古移設阻止に向けて闘った翁長知事の政治姿勢を支持しているのは明白でしょう。移設反対派にとって非常に心強いこの言葉をNHKはバッサリとカットして放送していた。それだけ、安室さんの発言には影響力があるということ。安倍政権に忖度したのでしょうが、沖縄で安室さんの追悼メッセージを知らない人間はいませんよ」(県議会関係者)

 その後も安室は積極的に動いている。沖縄県の観光ブランド戦略推進事業「Be.Okinawa」に無償協力。観光をはじめとする経済振興策を推し進めた翁長の遺志に寄り添うかのようである。

 引退前日の9月15日はラストライブが決定(14ページで詳報)。普天間基地を抱える宜野湾市の沖縄コンベンションセンター展示棟(5000人収容)で開催される音楽ライブに出演し、反戦ソングでも知られるBEGINやMONGOL800が共演する。ともに同郷の仲間だ。

「安室さんは単独ライブでもほぼトークをしないほど口下手ですが、共演者との掛け合いの中で故郷へのさまざまな“思い”を口にする可能性は大きい。宜野湾市は自公が推薦する佐喜真淳前市長のお膝元です。知事選告示2日後にそのド真ん中で声を上げられたら影響は避けられない、と陣営は戦々恐々だといいます」(在沖メディア関係者)

 安倍自民は党本部職員を次々に送り込み、国政選挙並みの態勢で臨んでいるという。

 沖縄県政に詳しいジャーナリストの横田一氏が言う。

「安室さんがひと言発するだけでも、佐喜真陣営の票を切り崩すのは必至。ましてや、〈翁長知事に捧げる曲です〉とでも言及すれば、自公にとって破壊的な効果をもたらすでしょう」

「弔い合戦」はまさに総力戦の様相を帯びてきた。

日刊ゲンダイ
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