文部科学省を舞台にした汚職事件で、東京地検特捜部が受託収賄罪で逮捕した文部科学省前局長、佐野太被告と国際統括官の川端和明容疑者を相次いで逮捕した事件。2つの事件の「贈賄役」として逮捕された医療コンサルタント会社元役員の谷口浩司被告だ。

佐野被告が同省官房長だった2017年5月、東京医科大学の前理事長臼井正彦被告から文科省の「私立大学研究ブランディング事業」に選定されたいという要請を受け、見返りに、自身の息子を「裏口」合格させた疑いだ。

 谷口被告は、佐野被告と臼井被告の会食をセッティングするなどして、手助けをした受託収賄幇助罪で起訴された。さらに谷口容疑者は、川端容疑者がJAXA(宇宙航空研究開発機構)の理事在任中、便宜を図ってもらう見返りに東京都内の飲食店などで140万円相当の接待、川端容疑者は宇宙飛行士の講師派遣などで便宜を図ったとされる。

 官僚に接待攻勢をかけた谷口被告は永田町、霞が関界隈では「政界ブローカー」として知られた人物という。

 谷口被告の逮捕後、妻が開設した<谷口浩司を信じる妻の疑問 谷口浩司のホームページ>によると、谷口容疑者は、国民民主党の羽田雄一郎参院議員の「政策顧問」という名刺を持ち、活動していたという。

 ホームページには、羽田氏や谷口被告が元秘書だったという、中井洽元法相、田村元厚労相や数々の官僚との写真が並ぶ。その中には、官僚とキャンプや誕生パーティをしているものや高級クラブでの飲食の模様もある。

 そんな中、谷口被告らが接触を図った「官僚リスト」を入手した。

 文科省だけでなく、外務省、国土交通省、厚生労働省、金融庁、内閣官房、合計31人の名前が並ぶ。佐野被告、川端容疑者や田村憲久元厚労相らの名前も含まれている。

「これらの役人を攻略して、谷口容疑者が自身がコンサルタントをしている会社に便宜を図ってもらったり、有利に仕事を進めようとしていたのではないか」(捜査関係者)

 リストに名前が載っている官僚の一人は、同僚に「谷口さんのことは知っている。何度か酒席をともにしたが、便宜を図ったことはない」などと話したという。前出の谷口容疑者のホームページを見ると、国会議員や官僚と飲食を繰り返し、<253400円>と記載された領収書の写真がアップされるなど、凄まじい接待の様子がうかがえる。

<中井洽先生は一晩300万円くらいは飲んだかもしれません>とクラブでの様子の写真があったり、新聞記者と佐野被告、谷口容疑者の3人が並んで写っている写真もあり、その人脈の広さがうかがえる。谷口容疑者を知る、議員秘書はこう言う。

「羽田氏の事務所の名刺で動いていた。ちょうど、民主党が与党になるかならないかの時期。羽田氏は国交相にもなった。官僚としても、名刺を持ってこられて羽田氏の名前があれば、お父さんは元首相だし、当時はまだ現役の衆院議員。何もしないわけにはいかない。逆に、羽田氏の事務所なら安心できるという信頼感もあった。そこを、谷口さんはうまく使っていた。だから、谷口さんから『おたくの先生の名刺をまとめてくれないか』と言われたこともありますよ。断りましたがね」

 前出のホームページでは、谷口被告の妻はこう訴える。

<事件の真相が知りたい、というのが私の率直な気持ちです>と記し、ホームページには「調べて」という単語が頻繁に登場する。

 今回の事件で谷口被告自身が佐野被告や川端容疑者への“口利き”で多額の報酬を得るなど利得があった様子はうかがえない。

 東京地検特捜部は、谷口被告を「悪徳ブローカー」に仕立て上げ、文科省幹部を逮捕するネタに使いたかっただけではないか、と訝しる声が永田町から聞こえてくる。

「安倍政権は森友学園、加計学園の問題で前川(喜平)前文科事務次官に徹底的にやられた。その仕返しで検察を使って、しっぺ返しをしたんじゃないかとも言われている。事件の捜査をしていれば、自民党総裁選に絡んでスキャンダルが報じられそうになっても、いろいろマスコミ操作で使えますからね。検察を使って、次なる爆弾を調べさせているんじゃないですか」(自民党ベテラン議員)

 谷口被告との関係について田村議員に問い合わせると、こう回答した。

つづく

※週刊朝日オンライン限定記事

AERA.dot
2018.8.10 19:25
https://dot.asahi.com/wa/2018081000086.html