一部専門職の労働時間規制をなくす「高度プロフェッショナル制度」の導入が決まった。作家・室井佑月氏は日本の行末を案じる。

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 6月28日、参議院厚生労働委員会で、高度プロフェッショナル制度も組み込まれた、働き方改革関連法案が強行採決された。

 国民民主党が採決に同意したから、強行じゃないと与党側はいっているが、28日といえばサッカー・ワールドカップ、日本対ポーランド戦が行われた日。ドタバタを狙って押し通すなんて、汚いったらない。

 それにしても、国民民主党、どうした?

 前回、5月に行われた党首討論で、質問から『モリ・カケ』を外した玉木共同代表。あの時、一部の新聞などが玉木代表を誉めていた。そういうことを、この人たちは鵜呑みにしちゃうんだろうか?

 だって、あの時の玉木代表を誉めていたのは、安倍様御用といわれる新聞、もしくは知識人たちだった。

 安倍様御用のその人たちは、どこまでいっても安倍ファースト。本気で玉木くんたちのことを応援するわきゃないじゃん。むしろ、誉められたら疑ってかからなきゃ。

 ま、討論が終わった後で、安倍首相に握手を求められ、玉木くんはまんざらでもない顔をしていた。もうどうでもいいわ、君たちは。

 どこをどうとったら、採決するまで議論はされつくしたといえるって? 残業が無制限となり、過労死が増えそうな、高度プロフェッショナル制度。安倍首相は、「労働者のニーズに応えるためそれを取り入れる」といってた。はぁ?

 聞き取りを行った労働者は、5社の12名。しかも、厚労省が依頼した企業の人。見張り付きの聞き取り調査。ずさんなアリバイ作りだな。国民を馬鹿にしすぎじゃ。

 高プロは、年収1075万円以上の一部専門職が対象とされているけど、これから先はわからない。経団連は当初、年収400万円以上を対象とすべしといっていたし。

 とにかく、これで企業側が、大手を振って、今より労働者をこき使える下地を作ったわけだ。結局、1%である自分や自分の子まで安泰って人が、もうちょっと99%側から養分を吸い取ってもいいんじゃない? まだまだあいつら死なないって、といった非情な発想のもとに生まれた新ルールだよ。

 ……ってなことをいうと、「しょうがないだろ、この国は超少子高齢化で労働者不足は進んでいくんだから」とかいい返す99%側もおる。いるんだよ、騙される人たちは。

 こういう人たちは、自分の子まで奴隷確定となっても、子どもを産みたいと思えるんだろうか? 若くても、あたしには無理。

 なにもかも虚しい。サッカー観て、発泡酒飲んで、新聞読まずに、もう寝るか?

 そうそう、6月27日の党首討論で、無所属の会の岡田克也さんが安倍首相に、「良心の呵責はないのか?」と聞いていたけど、ないわな、そんなもん。

 でなきゃ、過労死遺族の方々が傍聴する中、こんな法案、通せるわきゃない。

※週刊朝日  2018年7月20日号

https://dot.asahi.com/wa/2018071100012.html