◆社説[森友交渉記録]疑念はいっそう深まった
2018年5月24日 10:01 沖縄タイムス
森友学園 加計学園

 学校法人「森友学園」への国有地売却を巡り、財務省は23日、同省近畿財務局と学園側との交渉記録を国会に提出した。

 財務省の佐川宣寿理財局長(当時)は昨年の国会で、「(交渉記録は)廃棄した」「残っていない」と繰り返し答弁していた。ないはずの文書が出てきたのである。

 適正に廃棄したことを強調していた佐川氏の答弁とつじつまを合わせるため、保管してあった記録の廃棄を進めていたことも明らかになった。

 交渉記録には、安倍昭恵首相夫人の関与を示す記述もある。昭恵夫人は学園が開校を目指した小学校の名誉校長を務めていた。

 記録によると、学園の籠池泰典前理事長が昭恵氏を通じて国有地の貸付料減額を要望。昭恵氏付の政府職員だった谷査恵子氏は2015年11月、学園の要請に応じ、財務省に電話で問い合わせた。

 交渉記録は「安倍総理夫人の知り合いの方から、優遇を受けられないかと総理夫人に照会があった」などと記している。

 財務省の担当者から「現行ルールの中で最大限の配慮をして対応している」との回答を得た谷氏は学園側にファクスし、その旨を伝えた。

 安倍晋三首相は昨年2月、衆院予算委員会で「私や妻が関係していれば総理大臣も国会議員も辞める」と答弁している。

 間接的にであれ昭恵氏がこの問題に「関与」していたことは明らかであり、首相の政治責任はまぬがれない。

■    ■

 財務省はこの日、森友学園に関する改ざん前の決裁文書もあわせて国会に提出した。

 財務省はなぜ、公文書である決裁文書を改ざんし、改ざん後の文書を国会に提出した上で、国会で虚偽答弁を重ねたのか。

 森友問題は、加計学園の獣医学部新設問題と構図がよく似ている。

 加計学園の加計孝太郎理事長は安倍晋三首相の「腹心の友」で、森友学園の名誉校長だった昭恵氏は現職の首相夫人。

 この関係を前提にして官邸の官僚や財務省の官僚が「忖度(そんたく)」し、都合の悪い事実を隠蔽(いんぺい)するために官僚が国会で虚偽の答弁を繰り返した疑いがもたれているのである。

 公文書の改ざんと改ざん後の文書の国会提出、国会での虚偽答弁は、民主主義の土台を掘り崩す深刻な行為だ。

 組織の責任者である麻生太郎財務相が責任を取らず、その座に居座ったままだというのは理解に苦しむ。

■    ■

 この件では、上からの指示を受けて決裁文書の改ざんにかかわったとされる近畿財務局の男性職員が、追い込まれた末に自ら命を断っている。 安倍首相や麻生財務相は正直なところ、森友・加計問題をどう考えているのだろうか。公文書の改ざんを指示したのが官僚だとしても、安倍氏や麻生氏には責任がない、ということにはならない。

 政治家には結果責任がつきまとう。疑惑を解消できず、国政を混乱させ、政治不信を招いた責任を安倍氏も麻生氏も負わなければならない。

http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/256613