文部科学省前事務次官、前川喜平氏は15日、安倍晋三首相が14日の参院と衆院の予算委員会での答弁で、前川氏に言及したことについて、「内容は私の事実認識に反する」とするコメントを代理人弁護士を通じて報道機関に出した。

学校法人「加計学園」の獣医学部新設をめぐり、安倍首相が「前川次官も含め、誰一人として私から何らか指示を受けていない」などと答弁したことに対し、「(獣医学部新設への関与を否定する材料として)私の名前を使わないでいただきたい」と抗議している。

 全文は以下の通り。

 5月14日の衆参両院の予算委員会において、安倍首相は再三にわたり私の名前に言及しましたが、その発言内容は私の事実認識に反するものでしたので、以下の点を明らかにしておきたいと思います。

 1 国民民主党玉木雄一郎衆院議員の質問に対し、安倍首相は、「(加計学園は)ずっと構造改革特区のときから岩盤規制に穴を開けようとしてきたのは事実であります。安倍政権になってからも構造改革特区については安倍政権では4回却下をしているわけであります。そこであの前川前次官ですらですね、前川次官ですら、京産大はすでに出していたんですが、そのことをですね、そのことはまだ準備が十分ではないという認識の上にですね、熟度が十分でないという認識の上に、加計学園しかなかったということをおっしゃっていたわけであります。」と述べましたが、この発言は事実に反します。

 国家戦略特区ワーキンググループが2016年10月17日に京都府・京都産業大学からのヒアリングを実施したこと及びその内容については、その当時私は全く知りませんでした。文部科学省はこのヒアリングに呼ばれていなかったからです。「加計学園しかなかった」という認識は持っていましたが、それは首相官邸や内閣府が初めから加計学園の獣医学部新設を認めようとしていたこと、すなわち「加計ありき」という認識を持っていたということです。2016年10月17日の京産大の提案内容を知らされていない私が、加計学園の提案と京産大の提案とを比較考量することは不可能でした。

 したがって、加計学園と比べて「(京産大は)まだ準備が十分ではない」「熟度が十分でない」という認識を私が持っていたとする安倍首相の発言は事実に反し、極めて心外です。

 2 公明党中野洋昌衆院議員の質問に対し、安倍首相は、「これまでの国会審議を通じて、柳瀬元秘書官のみならず、前川前次官も含め、誰一人として私から国家戦略特区における獣医学部新設について、何らの指示も受けていないことが、すでに明らかになっています。」と述べました(共産党田村智子参院議員の質問に対しても同様の答弁あり)。

 たしかに、私は、国家戦略特区における獣医学部新設について、安倍首相から直接の指示は受けておりません。

 しかし、私は、2016年9月9日に和泉洋人首相補佐官に首相官邸へ呼ばれ、国家戦略特区における獣医学部新設について速やかな対応を求められました。その際、和泉補佐官は「総理は自分の口から言えないから、私が代わっていう。」と発言されましたので、私はこれを安倍首相自身の意思だと受け止めました。

 また、内閣府から文科省担当課に伝えられた内容を記録した文書(「官邸の最高レベルが言っている」や「総理のご意向」と記された文書)からも、私は加計学園の獣医学部の平成30年度新設が安倍首相自身の強い意向だという認識を持っていました。

 したがって、安倍首相が加計学園の獣医学部新設に自分が関与していないと主張するための材料として、私の名前に言及することは極めて心外であり、私の名前をこのように使わないでいただきたいと思います。

 2018年5月15日

       前川喜平

産経新聞
2018.5.15 14:24
https://www.sankei.com/life/news/180515/lif1805150017-n1.html