https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180512-00000008-ykf-soci

 【ニュースの核心】

 立憲民主党など左派野党の支離滅裂さが、またバレてしまった。

 麻生太郎副総理兼財務相の辞任など4項目の要求が満たされなければ、国会審議に応じないと拳を振り上げていたのに、柳瀬唯夫経済産業審議官(元首相秘書官)の参考人招致が決まったのを機に、国会復帰に方針転換した。

 真の理由はもちろん、世論の強い批判である。

 そもそも、彼らは国民の代理人として審議し、投票するために歳費をもらっているのだから、「18連休」もの職場放棄を続けて審議しないなら歳費返上どころか、議員バッジを外さなくてはならない。

 自分たちがよって立つ原理も分からないのが、いまの左派野党なのだ。審議の代わりにやっていたのは、合同ヒアリングという「官僚つるし上げ」である。自分たちを何だと思っているのか。

 彼らが要求していたのは麻生氏の辞任に加えて、柳瀬氏の証人喚問、財務省文書改竄(かいざん)問題の調査公表、自衛隊日報問題の究明である。

 ところが、柳瀬氏の参考人招致だけで手打ちしてしまった。麻生氏辞任はおろか、要求は1つも実現していない。これでは、野党を応援した人にも裏切りになる。

 それでも方針転換せざるを得なかったのは、世論の批判が日に日に高まるなか、彼ら自身が「振り上げた拳の下ろす先」に困ったからだ。柳瀬氏招致で何とかお茶を濁せる、と思ったのだろう。

 およそ戦いとは、勝つための戦略戦術と終わり方を先に考えてから始めるものだ。彼らは自分の使命だけでなく、戦い方も分かっていない。

 2015年の安全保障関連法案の採決でも、野党はそろって欠席した。彼らは自分たちが気に入らない展開になると、すぐ職場放棄する。そのくせ、どこまで本気かといえば、少し批判されるとたちまち腰砕けになってしまう程度なのだ。

 本気で戦うなら、戦い方もある。彼らは絶対、実行しないだろうから、ここで伝授しよう(笑)。野党議員は一斉辞職すればいいのだ。そうなったら、政権は衆院を解散して出直しせざるを得なくなる。

 野党はどうせなら「死ぬ気の覚悟」を見せたらどうか。口先だけの職場放棄など、バカバカしいだけで、もう見飽きた。いっそ辞職していただいたほうがすっきりする。

 さて、愚かなのは野党ばかりではなかった。一部マスコミも同じだ。

 例えば、朝日新聞は「与党単独審議 これでうみが出せるか」と題した4月27日付社説で、左派野党欠席のまま集中審議を行った与党を批判した。続けて、29日付社説でも、働き方改革関連法案を審議入りさせた安倍晋三政権を「国民不在のやり方」などと批判した。

 朝日新聞はどこを見ているのか。不在だったのは左派野党だろう。彼らがいないから、国民の声が国会に届かない。それなのに、政権を批判している。こちらも支離滅裂さは負けず劣らずだ。

 口先だけの「ズル休み闘争」に付き合わされた国民の不幸を、野党も朝日新聞も少しは真面目に考えたらどうか。

 ■長谷川幸洋(はせがわ・ゆきひろ) ジャーナリスト。1953年、千葉県生まれ。慶大経済卒、ジョンズホプキンス大学大学院(SAIS)修了。政治や経済、外交・安全保障の問題について、独自情報に基づく解説に定評がある。政府の規制改革推進会議委員などの公職も務める。著書『日本国の正体 政治家・官僚・メディア−本当の権力者は誰か』(講談社)で山本七平賞受賞。最新刊に『ケント&幸洋の大放言!』(ビジネス社)がある。