2018年2月8日14:45 バザップ
http://buzzap.jp/news/20180208-shitamachi-bobsleigh/

平昌五輪を目の前に、日本に垂れ込める暗雲が具現化した形になっています。

明日に開会式を控えた平昌五輪を目前にして、東京都大田区の町工場有志が開発した「下町ボブスレー」がジャマイカの五輪チームから不採用を通告されたニュースが大きく報じられています。

一方的に契約を破棄された事からジャマイカ側を非難するような声も聞かれるのですが、事情はもっと深刻で、純然たる日本のものづくりの技術力の衰退を示すものでした。

◆不採用への経緯
まず今回の状況の流れを大まかに見ると、「下町ボブスレー」のプロジェクト推進委員会は2016年7月にジャマイカボブスレー・スケルトン連盟と「推進委はそり3台を無償提供し、連盟は平昌五輪で下町ボブスレーを使う」という内容で契約。

ですが2017年12月に開催されたドイツでのワールドカップで、輸送機関のストライキによって「下町ボブスレー」が現地に届かず、ジャマイカチームは急遽ラトビア製のそりで出場したところ、「驚異的にタイムが伸び」て7位を獲得。その後もラトビア製に乗り続けることで五輪への出場を決めました。

テレビ番組ではドイツでの滑走テストで「下町ボブスレー」がラトビア製に比べて2秒遅かった事が明かされています。

当然ながらジャマイカ連盟は「下町ボブスレー」側に対して「ラトビア製と比べて遅い」などと批判して改良要求も出され、推進委も技術スタッフを欧州や平昌に派遣するなどして対応したものの、五輪では使用しない意向を示してきました。

推進委は2月2日、ジャマイカが「下町ボブスレー」を五輪で使わない場合は違約金条項に則り、そりの開発費と輸送費の合計額の4倍となる6800万円の損害賠償を含めた法的措置を取る意向を伝えました。しかしそれでもジャマイカ連盟は2月5日に在ジャマイカ日本大使館を通じて最終的に五輪で使用しない意向を示しました。

ジャマイカ連盟ストークス会長は不採用の理由として「遅い」「安全でない」「機体検査に不合格」の3点を強調し、朝日新聞の取材に対して「1月に行われた2度の機体検査に不合格だった。五輪でも失格の恐れがあった」と語っています。

推進委は不合格を認めたうえで「すぐに修正できる細かい違反だけ。一時は合格も出た。五輪には間に合う」と主張しましたが、そもそも検査に合格できない製品を納入した時点で職人としては致命的な失態で、「直せば大丈夫、間に合う」と言って済む問題ではありません。それ以上に五輪まで1ヶ月の時点での致命的な性能のビハインドは小手先の修正ではどうすることもできません。

(中略 ソースにて)

なお、小杉氏は「下町ボブスレー」自体が大田区の「ものづくり」のブランド化を目指す組織「大田ブランド」のイメージをPRするためのものと明言。インタビューに以下のように回答しています。

「たとえば東大阪の『まいど1号』(人工衛星)とか、墨田区の『江戸っ子1号』(深海探査機)とか、それぞれの町工場が技術力をアピールするものを作っているわけですが、大田区の場合はスポーツの分野でいこうと。世界中の注目を浴びる大会といえば、五輪。ただし、夏季よりも冬季のほうが用具を使う競技が多いし、大手(メーカー)も入っていないので、ウチらでもできそうだと。そこでソリ競技のボブスレーが一番いいのではないかと思ったわけです」

町工場からソチ五輪につなぐ夢=下町ボブスレーの知られざる挑戦 ? スポーツナビ

ということで、徹頭徹尾大田区の産業PRのためのプロジェクトであり、ボブスレーを選んだ理由は「大手(メーカー)も入っていないので、ウチらでもできそうだ」という程度のものでしかなかったのです。

しかしこのプロジェクトは2013年2月28日衆議院本会議で安倍首相の施政方針演説で「下町ボブスレー」を取り上げ、中小企業や小規模事業者の応援を宣言したことから象徴的な意味合いを持つようになります。

参考)
下町ボブスレーへのエール
https://ameblo.jp/shitamachibobsleigh/entry-11481138905.html