2018年1月19日 日刊ゲンダイ
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/221542

 捜査の進展はどうなっているのか。リニア中央新幹線の建設工事を巡る大手ゼネコン4社の談合疑惑は、年が明けた途端、続報がパタリと途絶えてしまった。

「東京地検特捜部が動いた以上、談合事件の先にはバッジ(国会議員)をターゲットにしていると見られていました。しかし、どうも雲行きが怪しくなってきた。談合事件すら立件できるか分かりません」(全国紙社会部記者)

 ゼネコン側もやけに強気だ。鹿島と大成建設は、談合に当たる不正はないとして、22日が期限の課徴金減免制度に基づく違反の自主申告をしない方針だという。

■強制捜査直後に地方へ異動の閣議決定

「このまま事件がウヤムヤに終わるとすれば、官邸の粛清人事が影響している可能性がある」と、司法関係者がこう言う。

「特捜部が独占禁止法違反容疑で、鹿島と清水建設の本社を家宅捜索し、強制捜査に乗り出したのが昨年12月18日でした。実は、そのわずか1週間後の12月26日に、当時の林真琴刑事局長を名古屋高検検事長に転出させる人事案がこっそり閣議決定されたのです。

林刑事局長と東京地検の森本宏特捜部長のラインでリニア疑惑を徹底追及すると見られていた直後に、林刑事局長が突然、飛ばされた。役職的には栄転とも言えますが、検察内では『林さんは虎の尾を踏んだ』ともっぱらでした。つまり、官邸が『これ以上、手を突っ込むな』と牽制する意味で粛清人事を行ったと見られているのです」

 法務・検察が不可解な人事に翻弄されるのは、今回が初めてではない。法務省の黒川弘務事務次官は、渦中の林氏と司法修習同期で、官邸の覚えがめでたい人物だ。

「16年に法務省は林氏を次官に充てる人事案を打診したのですが、官邸の意向で黒川氏が次官に就くことになった。官房長時代に官邸の意向を受けて甘利事件を握り潰した論功行賞でしょう。森友学園問題でも籠池前理事長を逮捕するよう現場の尻を叩いたとされ、『官邸の守護神』とも呼ばれています。黒川次官はリニア事件の捜査にも消極的だったそうです」(前出の司法関係者)

これが本当なら、黒川次官がいるかぎり、安倍官邸は安泰ということだ。

 だが、よその地検からも検事を動員して大々的に捜査を開始したリニア談合疑惑が立件できなければ、特捜部のメンツは丸潰れ。国民からの信頼を取り戻すには、報復人事を恐れず、巨悪に切り込むしかないはずだ。