1/10(水) 8:49配信
朝日新聞デジタル

 韓国の文在寅(ムンジェイン)政権が9日に表明した日韓合意についての新方針に、日本政府は強く反発した。韓国側は元慰安婦らの心情を重視し、日本側にも理解を求めるが、日本は追加措置には応じない方針。北朝鮮問題を抱える日韓両政府は難しいかじ取りを迫られている。

 文在寅政権が日韓合意について「再交渉」を求めないとする一方、合意に基づき日本政府が元慰安婦支援財団に拠出した10億円と同額を韓国側が支出するとの新方針を決めた背景には、朴槿恵(パククネ)前政権時代の「積弊(積み重なった弊害)清算」の一環として追求してきた合意見直しと、対日関係改善を両立させたいとの狙いがある。

 文大統領は4日、元慰安婦や支援団体関係者と懇談し、合意について「真実と正義の原則に外れる」として謝罪。大統領府は、この席で元慰安婦らが合意破棄や日本政府の公式謝罪を改めて訴えたと発表した。

 ただ、河野太郎外相が「合意を変更しようとするなら日韓関係は管理不能になる」と警告する中、元慰安婦らの意見に寄り添えば両国関係が破綻(はたん)するのは明らかだ。

 そのため合意を維持する形をとる一方、合意の「根幹」といえる日本政府による元慰安婦支援財団への10億円の拠出金を韓国政府の予算からの支出に置き換えるとの策に出た。

 韓国外交省当局者は「(日本が拠出した)10億円は、被害者はもちろん、国民が受け入れない面があった」と解説。新方針で宙に浮く日本拠出の10億円は、日本側との協議で取り扱いが決まるまで、手つかずの状態で保管するという。

 財団はすでに日本政府の拠出金をもとに生存者47人のうち34人に各1億ウォン(約1千万円)、死亡者199人のうち58人の遺族に各2千万ウォンを支給する手続きを取っている。合意破棄や財団解体に踏み切った場合、すでにお金を受け取った元慰安婦や家族に「『汚いお金を受け取った』との心理的な苦痛」(財団関係者)が生じ、大混乱するとの懸念もあった。

 元慰安婦らが求める新たな謝罪についても、合意維持を前提に「日本側が自ら、被害者の名誉と尊厳の回復と心の癒やしに向けた努力を続けてくれることを期待する」との表現にとどめた。

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