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(つづき)

──一方で、海外に目を向ければ米ハリウッドで有名プロデューサーの性暴力が告発されたのをきっかけに多くの女性たちがSNSに「Me Too(私も)」と書いて連帯したり、体験を分かち合ったりしている。

「日本では長く“女性としての振る舞いや言葉遣いは、こうあるべきだ”と決められてきたから、企業や男性社会のなかで生きていくのは難しい。そんな影響があるのではないかと思います。

 それでも考えなくてはいけないのは、性被害とは、男女の話ではなく、暴力の話だということ。Me Tooのムーブメントによって、性暴力を社会全体の問題としてとらえ、これを止めようという動きが世界で広がっています。ただ残念なことに、日本ではそうなっていません」

──性暴力は密室で行われることが多く、犯罪の立証が難しいといわれている。

「警察から“ブラックボックス”“よくある話だから難しい”とは何度も言われました。立件して有罪に持ち込めるまでの証拠がなければ、と捜査する前から捜査員が言うのも聞きました。起訴できなければ被害届は受け取るなとか、最終的に有罪にならない案件は起訴もできない、といった検察から捜査現場へのプレッシャーがあるのでは? 今の司法システムが映し出されているように感じます。

 また捜査員が変わるたびに何度も同じことを聞かれ、処女かどうかなど繰り返し尋ねられたりするのもおかしい。行きたくもない現場に連れて行かれたり、人形を使って被害を再現させられたりするのは、被害者がどういう精神状態にあるかをまったく理解していないから。110年ぶりに刑法が改正されましたが、捜査態勢や受け入れの仕方が変わらなければ、誰も警察に足を運べないと思います」

12月5日に行われる、民事訴訟の初公判を前に
──加害者が社会で成功しているなど力関係に差がある場合、なお告発は難しい。

「日本社会は上下関係が厳しく、コーチや先生、職場で力が上の相手などには歯向かえないような人間関係にある。そのとき、どう抵抗すればいいのか。イギリスでは、被害者がどう抵抗したかではなく、加害者のほうが性行為の合意を取ったかどうかを証明しなければなりません。スウェーデンも、その方向に動いています。日本でも改善されなければならない問題です」