猪野 亨2017年11月12日 07:37
http://blogos.com/article/258498/

加計学園獣医学部は認可されれば、それと同時に学生募集が始まります。

 140人の定員のうち20人は留学生枠だそうですから、国内では120人の定員が増えるわけです。受験予備校では獣医学部の人気から定員は埋まるあろうと予測しています。

 定員を埋めるだけというなら、それはあり得ます。とにかく私大が定員を確保するために水増し合格を行い、それでも定員割れなら追加合格を出せばいい、という手法です。

 これだけであれば加計学園は論外として、獣医学部全体の水準が下がります。

 今、全体の定員が930人(他大学でも留学生枠はあります)ですが、120人が増えるわけですから1割以上の増加です。あまりに急激な増加です。これまで不合格だった人たちが120人合格できるということになります。

 獣医学部の志望者が数百人規模で増加すればともかく(これも獣医学部に行けば何とかなるかなという程度の層が増えても水準が上がることはありません。)、これまでの志望者の推移の中で合格者数だけが増えるということになれば、その分だけ入り口での質が下がります。

 朝日新聞2017年11月11日付朝刊に獣医学部を目指す20歳の浪人生のいたビューが掲載されています。

「獣医師が増えて質が落ちるのはよくないが、受験のチャンスが広がってよかった」

 とにかく浪人してでも獣医学部に行きたいということであれば歓迎でしょうが(実力が上がらなくても定員が増えるので合格できる余地が出てくる)、多くの学生は「過剰」ということに魅力を感じないわけで獣医学部自体が地盤沈下してくのは必至です。

 法科大学院がその典型で、最初の開校年度こそ志願者が殺到しましたが、実は弁護士の需要などないとわかるとさっと志願者は激減しました。

 安倍氏は岩盤規制に穴を空けたみたいに言っていますが、岩盤どころか地盤沈下が待っているだけです。安倍氏が余計な穴を空けてしまったからですよ。

 犬猫のペットも中高年層が主な飼い主層であり、今後、いずれペットの需要すらも減っていくことは常識レベルですが、犬猫病院が過当競争になっているところへ、さらに需要が減るのに、そこへもってさらに獣医師を増員しようというのですから目茶苦茶です。専門職の養成にはほど遠い粗製濫造になることでしょう。

「加計学園問題 獣医師は不足している? 加計学園の獣医学部新設は質の低下と混乱だけをもたらす」

 朝日新聞には識者として唐木英明・東大名誉教授が獣医学部新設について肯定的なコメントをしています。

 しかし、内容があまりにひどい。

「国際レベルの教育が可能に」ということで、「国際レベルから遅れた日本の獣医学教育の改善」になるそうです。

 加計学園は、高齢の教員を集めたそうですが、私立大学が法科大学院を設立するときに定年退職者をひっかき集めて教員をそろえたということとよく似ています。

 唐木氏に言わせるとこれで国際レベルが上がるというのうですが、誰がどう考えても無理です。

 また、そういった国際レベルを上げたいというのであれば既存の獣医学部への補助金を増額した方がよほど効率的なのですが、この唐木氏のコメントではそれが新設でなければならない理由が全く不明です。