http://www.sankei.com/premium/news/171028/prm1710280016-n1.html

 自民党が単独でも過半数を確保した第48回衆院選。その選挙結果をテレビがどう報じたか、22日の開票当夜および翌23日の番組を通じて改めてチェックしてみたい。「一部の放送には偏りが目立ち、疑問を持たざるを得ないものもあった」。放送法が定めた「政治的公平性」は画餅と化した、との声がメディアの専門家からも上がっている。

テレ朝「安倍政権への不満、マグマのように…」

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TBS「国民の思いとズレ」

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番組内で異論?

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勝ったのは立憲民主党?

 テレ朝、TBSは22日夜の選挙特番で、立憲民主党に対して惜しみない称賛を贈った。立民と枝野幸男代表こそが“勝者”であるかのようだった。

 「『枝野ブーム』突然に…“草の根”が吹かせた風」(テレ朝)

 「旋風!立憲民主党が大躍進」(TBS)

 このようなテロップを出し、「行くところ、行くところで握手攻め」(テレ朝)とのナレーションで枝野代表の演説に多くの聴衆が集まった映像を放送したかと思えば、「信念を変えなかった枝野(幸男)代表の下で、かつての仲間たちも立ち上がりました」(TBS)とドラマチックな演出で持ち上げた。

 しかし、立民の議席数は55。公示前勢力(15議席)の3倍以上ではあるが、284議席を獲得した自民のわずか5分の1に過ぎない。東京新聞によると、「躍進したとはいえ、55年体制以降で『最小』の野党第1党である」(10月26日付)らしい。

 インターネット上では、視聴者からのあきれ声も聞かれた。

 《あからさまな立憲民主押しだ…》

 《立憲民主党を持ち上げすぎ》

 《自民圧勝をなぜ無視するんだろう?》

気に入らなければ「民意に反する」

 今回の衆院選は、テレビメディアにとっても関心の高い選挙だった。

 テレビ番組の内容を調査・分析するエム・データ(東京都港区)によると、衆院選が公示された10日から投開票前日の21日まで、NHK総合とEテレ、在京民放5社のニュースや情報番組などの総放送時間は84時間43分にのぼった。これは14年の前回衆院選(38時間21分)の約2・2倍だ。12年に実施された前々回衆院選(61時間45分)も上回る。

 しかし、その関心の高さに呼応するかのように選挙期間中の“偏向ぶり”も目立った。

 たとえば、テレ朝が公示翌日の11日に放送した党首討論では、民間の学校法人をめぐる言いがかりのような「疑惑」だけを放送時間(約40分間)の半分以上に充てた。

 改憲反対派への投票を呼びかけるかのような出演者の発言を放任する番組もあった。

 「テレビ局には編集権があるとしても、各党が提示している争点をバランスよく視聴者に伝えることは重要な使命だ。今回の選挙報道をめぐる一部の放送には偏りが目立ち、疑問を持たざるを得ないものもあった」

 こう指摘するのは、マスメディアの動向に詳しい国際医療福祉大の川上和久教授(政治心理学)だ。

 川上教授は一部のテレビが選挙結果の大勢判明後、相次いで民意が反映されていないかのような解説を加えたことについて、次のように話す。

 「それらのテレビは、2009年に今回と同じ小選挙区比例代表並立制の下で民主党政権が誕生したときにはもろ手を挙げて、政権交代を歓迎してはいなかったか。自分たちの気に入った政権に対しては『民意の表れだ』と伝え、気に入らなければ『民意が反映されていない』かのように報じるのは、言いがかりのように感じられる」

 「民意をないがしろにしている」という批判の矛先は、今回のテレビ報道自らに向けられる。(文化部 玉崎栄次)

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