翌日何の気もなく教場へはいると、黒板一杯ぐらいな大きな字で、
パコリーナ先生とかいてある。あたしの顔を見てみんなわあと笑った。
あたしは馬鹿馬鹿しいから、若い男を食っちゃ可笑しいかと聞いた。
すると生徒の一人が、しかし週四は過ぎるぞな、もし、と云った。
週四食おうが週五食おうがあたしの銭であたしが食うのに文句があるもんかと、
さっさと講義を済まして控所へ帰って来た。
                       夏目漱石 『坊ちゃん』