安倍昭恵夫人付きの秘書として森友学園と財務省の連絡役を務めた経産官僚は、イタリア大使館に赴任した。この女性は、文書による仲介の事実が明らかになってから役所にも出勤していない。今度は「ローマの休日」か。一等書記官という厚遇の裏には、東京に置いておけない事情があるとしか思えない人事である。

 籠池夫妻は「証拠隠滅、逃亡の恐れ」と認定され逮捕された。籠池夫妻の要望を受け入れ、9億円の国有地を1億円で売った側はどうなったのだろう。証拠となる内部文書は廃棄、仲介した官僚はローマに「高跳び」。証拠隠滅・逃亡は役所の側のように思える。権力を持つ側は、都合いいことはなんでもできる。森友疑惑はツッコミどころ満載。これで信用回復ができるのだろうか。

● モリカケ問題で 安倍政権は3つの誤りを犯した

 北朝鮮の核ミサイルや中国の膨張主義、北東アジアの脅威は高まり、アメリカではトランプ政権で自国中心主義が露骨になった。加計や森友など小さな問題で大騒ぎしている時ではない。そんな意見をよく聞く。もっともらしく聞こえるが、事件の規模が小さいからと、たいした問題ではない、と考えるのは浅はかである。加計・森友は政権の体質を表す出来事だ。

 政権の命取りになりかねない大事になったのは、致命的な「3つの誤り」を犯したからだ。第一は「権力の私物化」。第二は「都合の悪いことをウソで切り抜ける隠蔽」。第三は「誰も自分の責任と思わない空洞行政」である。

 「安倍さんはいい人だ」とよく聞く。「知り合いを大事にする」という。そんな性格は決して悪いことではないが、最高権力者という自覚がないと周りを振り回すことになる。留学仲間の加計クンとの友情を大事にすることが、加計学園の事業を応援することに繋がっては困る。

 50年門戸が開かなかった獣医学部の扉をこじ開けなければ、と思ったのかもしれないが、こじ開けるとこととお友達関係が直結すると「権力の私物化」になってしまう。友達を大事にしたい首相の我がままに周囲が従ったのが事の起こりではないだろうか。

 「加計学園に」という結論が先に決まり、その結論に落とすよう行政が歪められたとしたら問題だ。首相の奥さんが名誉校長に就任した小学校は、国有地の買い取りが格安にできた。普通ありえないことが「安倍つながり」だと可能になる。悪気がないところが深刻である。上に立つ者が「権力の私物化」に鈍感なら、下はどうなるだろう。未熟な首相に強い権力を与えてしまったことに間違いがあったのかもしれない。