南スーダン国連平和維持活動(PKO)の日報問題をめぐる閉会中審査が衆参両院の委員会で行われた。
 陸上自衛隊の日報データはなぜ隠蔽(いんぺい)されたのか。内部で発覚した後も存在を非公表とした経緯に稲田朋美元防衛相の関与はあったのか。

 こうした疑問の解明を図るはずの審査だったが、終日の質疑を経ても何も明らかにならなかった。
 新たに就任した小野寺五典防衛相は「つまびらかに国民に報告する」と答弁した。しかし、疑問解明のための再調査を拒否した。

 防衛省事務方の当事者である辰己昌良審議官は特別防衛監察の報告書に記されたこと以外「申し上げることは差し控えたい」と繰り返した。
 これでは真相究明にはほど遠い。

 焦点は、いったんは廃棄したと公表した陸自の日報データが存在することについて、2月中旬に2回行われた省内協議で稲田氏が報告を受けていたかどうかだった。

 小野寺氏は「(監察の聴取では)意見が分かれた。報告はないという人の話は終始一貫している。報告したという人の意見は二転三転し、あいまい」と説明した。だが、防衛監察本部の幹部は、何人ずつで意見が割れたのか、だれがどう言ったのかなどの詳細は明かさなかった。

 防衛省は監察の過程で得られた証言や資料などは情報公開法の「非開示情報」にあたると言う。

 しかし、きのうの質疑は国会が真相を究明する場だ。国会での答弁と情報公開を横並びにするのは違和感がある。防衛省はできる範囲で積極的に情報を公表すべきだ。
 稲田氏との協議に出席し真相を知る辰己氏は口をつぐんだ。事実関係すら明らかにしない態度は国民の不信を増幅させるだけだ。

 そもそもなぜ日報は隠蔽されたのか。昨年7月の首都ジュバでの「戦闘」状況が公開されれば、駆け付け警護の任務付与に影響を与えないかと考えたとしても不思議ではない。

 陸自データの非公表は防衛省高官が主導したが、稲田氏がこの報告を受けていたら隠蔽を追認したことになる。受けていないならシビリアンコントロール(文民統制)がなぜ働かなかったかの検証が必要だ。


 日報問題の疑問に答えられるのは稲田氏だけだ。


http://mainichi.jp/articles/20170811/ddm/005/070/061000c