エコの小池知事 明大通りの街路樹70本撤去を止められるか
日刊ゲンダイ:2017年8月11日
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/211204

 JR御茶ノ水駅御茶ノ水橋口から駿河台下交差点に向けて坂を下る明大通り。
歩道には夏の日差しを浴びた見事な街路樹プラタナスが、生き生きと緑葉を茂らせている。
交差点までの535メートルに推定樹齢40〜50年の樹木が70本。
この大木を管理する千代田区が歩道拡幅工事のため、すべて撤去する予定だ。
「環境モデル都市」の千代田区で何が起こっているのか。

 1期工事で対象の33本は今月末から撤去が始まる。
歩行者や周辺の店の店員などに聞くと、撤去のことを知らない人が大半だ。
区の道路公園課は工事の目的を安全歩行のための歩道拡幅やバリアフリー化と説明するが、ちょっと待ってほしい。

 2020年東京五輪に向け、東京都は先月、街路樹を活用した暑さ対策を始めたばかり。
都は「新規の植樹ではなく、今ある街路樹を丁寧に剪定し、木陰が広がるようにします」(公園緑地部計画課長)と説明する。

 都が“今ある街路樹”を生かそうとスタートした直後に、区は70本もの街路樹をバッサリ撤去するのである。

 明大通りは区道だが、小池都政も無関係ではない。
区は今回の道路整備事業について、都に福祉関連の補助金をエントリーする予定だ。
1期工事だけで最大6000万円を見積もっている。
小池都政は“バッサリ事業”をバックアップするのである。

 加えて、千代田区の石川雅己区長は、都内唯一の「環境モデル都市」として、環境問題に熱心な区長。
2月の区長選では小池知事の全面支援を受け、5選を果たしている。
選挙でタッグを組んだエコの小池と石川が、70本の街路樹撤去を放置するのはおかしいだろう。

 9日の正午、気温は35度だったが、話を聞いた歩行者は異口同音に街路樹がつくる木陰をありがたがっていた。
区は撤去後、4メートルの新街路樹を植えるというが、現在の十数メートルの大きさに成長するのには30年以上かかる。
それまでは歩行者に直射日光が直撃する。
工事では、保水ブロックや遮熱舗装で路面温度を抑えるというが、それは樹木を切ることで熱くなるからではないか。

 さらに「歩道拡幅」の必要性も首をかしげたくなる。
明大通りの歩道は人通りは多いものの、決して狭くはない。
第1期工事で、街路樹を撤去して、拡幅される歩道の幅はたったの25センチ。
そのために歴史ある木を泣く泣く撤去するのか。

 小池と石川はエコの看板を掲げ続ける気なら、一度立ち止まるべきだ。

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大きな木陰が歩道を包む(千代田区の明大通り)