日本のネット界隈では「マスゴミ」という言葉がすっかり定着している。

 公益財団法人の新聞通信調査会が行なった調査によると、2016年、新聞を全般的に見て満足であると答えているのは全体の51.8%。前年から2.1ポイント減少した。
不信感がゆっくりと高まっている中、今年の調査がどうなるのか、見ものである。

メディアの誤りや偏向などが議論され、メディアのイメージが悪くなりつつある背景には、間違いなくインターネットの存在がある。
ネット上でメディアへの“批評”(単なる“言いがかり”も含め)が、いまだかつてない規模で行われるようになったからだ。

 既存メディアに対するネットの影響力を考えると、ある疑問が湧いてくる。ネットは世界中で普及しているが、メディアの信頼性が落ちていると考えられるのは、
日本だけなのか? 世界ではどうなのか?  先に答えを言ってしまうと、もちろん日本だけではない。実は海外でも、メディアの信頼性は落ちているのだ。

■米国の場合

米国では、ジャーナリストの社会的な“地位”は日本などと比べて高い。米国では、地方紙などで訓練を受けて経験と実績を積んでから、
全国紙などにステップアップするのが通例で、そうした下積みを経て、ニュースや外交、安全保障など国家的なニュースを対象にして取材を行えるようになっていく。
有能なベテランジャーナリストがいろんなキャリアを積んで集まる全国紙の記者ともなれば、世間から一目置かれる存在となる。

ネットの普及とトランプ政権の誕生もあり、様相は変わりつつある。米ハーバード大学と調査会社ハリスが行なった調査によると、
全体の65%が既存の大手メディアにはフェイクニュースが溢れていると考えている。トランプの支持基盤である共和党員に至っては、
80%が既存メディアはフェイクニュースだらけだと考えている。一方、ネットの情報はどうかと言うと、
84%がネットの情報はどこまで信じればいいのかが分からないと答えている。

 また別の調査でも、メディア不信が数字になって現れている。調査会社ギャラップは、2016年、メディアを信頼できると答えた米国人はたったの32%で、
この数は1997年の53%からかなり落ち込んでいると指摘している。

 こうしたメディア不信の理由のひとつには、メディアは「エリート」側にいると批判的に見るトランプ支持者の人たちの感情を、大統領がわざとあおっていることがある。
つまり、トランプのツイートによるメディア批判が効いていると考えられる。そのせいで、今、米メディアの信頼性はガタ落ちになっているのである。

■英国の場合

 他の国ではどうか。英国もメディアの信頼度低下が報告されている。英調査会社YouGovが行なった、英国で一番真実を語っていると思うメディアはどれか、
との調査に衝撃的な結果が出ている。なんと、1位になったのは「Wikipediaの執筆者たち」で、回答者の64%がWikipediaを挙げたのである。

 英国民は既存メディアよりも、ネット上にある“百科事典”を信頼していることになる。2位に入ったのは「(英公共放送の)BBCの記者」で、
回答者の61%が真実を語っているだろうと答えた。英ガーディアン紙などの一般紙の記者に対しては、45%が信じられると答えている。

 また英国の別の調査によると、メディアを信頼できるとした英国民は24%で、2016年の36%から大きく下落した。英国の場合、
2016年のブレグジット(EU離脱)の国民投票で、メディアの事前予測に反して離脱が決定したり、同年にほとんどのメディアの予想に反してトランプ大統領が誕生したことなどが、
メディア不信につながっていると見られている。