外相・防衛相兼務 首相経験者「絶対に無理」 職務集中、利益相反も
東京新聞:2017年7月30日 朝刊
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201707/CK2017073002000124.html

 北朝鮮が二十八日深夜に大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射し、半日前に防衛相を兼務したばかりの岸田文雄外相が対応に追われた。
政府は「一人二役」でも問題ないと不安の打ち消しに懸命。
八月三日にも見込む内閣改造まで乗り切る構えだ。
しかし、事態が深刻化したときに岸田氏一人で対処できるのか疑念の声も上がる。
野党は有事の際に支障が出るのは明らかと批判した。

 岸田氏は二十八、二十九両日、東京・霞が関周辺を慌ただしく往来した。
二十八日午前は閣議や記者会見に出席。
午前十一時五十分に防衛相兼務の発令を受け、午後には防衛省に入って北朝鮮情勢を含めた説明を聞いた。
ICBMが発射されると二十九日午前零時半すぎには首相官邸へ。
国家安全保障会議(NSC)に出た後、防衛省へ移動する。
外務省に立ち寄り、帰途に就いたのは午前四時前だった。

 寝たのもつかの間、外務省に戻り米韓両国外相とそれぞれ電話で会談。
午後は官邸でNSCに出席し、防衛省でも対応に当たった。

 一、二日ならこうした対応が可能でも、一触即発の事態に陥った場合に問題はないのか。
首相経験者の一人は「絶対に無理だ」と指摘する。
安保上の対応に忙殺される一方、外交交渉も多忙を極めるのは確実だからだ。
「安倍首相は内閣改造まで事態は急変しないと踏んでいるのだろう」と判断を疑問視した。

 外務、防衛両省の主張が衝突するケースもあり得る。
在外邦人輸送は外相が防衛相に依頼し、防衛相は自衛隊の安全を確保できる範囲で派遣を命じるが、両省の安全判断が一致するとは限らない。
政府は「利益相反」の事態も想定したのか、NSCには若宮健嗣防衛副大臣も出席させた。

 共産党幹部は「防衛相不在の空白を北朝鮮に狙われたのでは」と批判した。

◆「最大限の圧力」米国務長官と一致 対北で電話会談

 岸田文雄外相は二十九日午前、ティラーソン米国務長官と電話会談し、大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射した北朝鮮に「最大限の圧力」を加える考えで一致した。韓国の康京和外相とも電話会談した。