二重国籍に強まる世界的な逆風
八幡和郎:評論家、歴史作家、徳島文理大学大学院教授
アゴラ:2017年07月17日 21:30
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緑:多重国籍を認めている国家 赤:多重国籍を認めていない国家(Wikipedia:編集部)

蓮舫さんが若い頃、なにか格好良いことのように二重国籍を自慢していたことがある。
しかし、一人の人間が二人分の権利や義務をもつことが不自然であることはいうまでもない。

ハーフなら半分ずつですからいいのですが、デュアルというのはおかしい。
二重国籍がいいことなら、重婚もいいはずだし、国内の住所だって二つ持って地方選挙権も二カ所で行使しても良いはずだ。

二重国籍が良いことだなどと世界で思っている国はない。
ただ、世界的に国籍制度が統一されるまで、過渡期的に存在する便法のひとつに過ぎない。

いいとこ取りをして、税制などで不当な利益を受けたりすることもできるし、テロ対策が難しくなったりするのでアメリカ国務省も公式に推奨しないと言っている。

しかし、父母の国籍が違うことから気の毒なことが起きたり、政治的亡命者などの微妙な立場を助けるとか、再入国が著しい不便になることもあるので、二重国籍を例外的に認めている国もあるだけだ。
といっても、帰化して元の国籍を失った人は、普通は同種の不便を感じているはずだから、それとのバランスを考えれば、それほど同情するべきかは疑問もある。

むしろ、二重国籍を認めている国は、人口や税収を増やしたいので、もとの国籍を放棄しなくてもよいというのを餌にして勧誘している。

しかし、国際情勢が厳しいと、忠誠を誓うべき国が複数あるとややこしいことがいろいろ起きる。
ヨーロッパでは、テロ事件以来、国民意識が高揚しており、そのなかで、国家への忠誠求める風潮が、極右などでなくても高くなっている。

そこで、プーチン大統領は、最近、帰化するときに厳密な忠誠宣言をさせることを決めた。
韓国などでも同様らしいから、日本に帰化するときに、何の忠誠宣言も求めないのはとんでもないことだ。
日本に心を売らないが、日本のパスポートの方が便利だからとかいった芸能人がいたが許せないことだ。

ヨーロッパでは義務兵役があったときは、二重国籍でも、どこでそれを果たしたかで忠誠対象を判断できたが、兵役廃止で意識が希薄になったことに悩んでいる。
また、女性の地位が高くなると女性の忠誠はどう確保するかも問題だ。

そこで、スウェーデンに続き、フランスでもマクロン新大統領が男女共通軍事教練の義務化を公約にして当選した。
女性も軍事教練と愛国教育を受けなければならないことになりそうだ。

まして、政治家では、今月になってオーストラリアで二重国籍の国会議員が「帰化の時に元の国籍を失っていたと思い込んでいた」と言い訳をしたものの罷免されました。
韓国では、康京和外相の任命にあたり、娘の二重国籍が合法的なものにもかかわらず、問題視された。

日本でも、国会議員や閣僚は最低限、禁止すべきだ。
法的整備も急ぐべきだが、まず、与党が次回の国籍選挙で、二重国籍者は公認しないという姿勢を明確にして欲しいものだ。