内閣支持率30%を切れば「安倍おろし」の風が一気に吹き出す〜田原総一朗インタビュー
2017年07月16日 08:32
http://blogos.com/article/234676/

「安倍一強」と言われ、盤石と思われた内閣が揺らいでいる。森友学園、加計学園という学校にからんだ問題で批判を受け、内閣の支持率が急落、自民党は7月上旬の東京都議会選挙で惨敗した。今後の政権の行方をどう見ればよいのか。田原総一朗さんに聞いた。【田野幸伸(編集部)・亀松太郎】

慢心と驕りが招いた支持率低下

 東京都議選(7月2日投開票)の後に実施された各社の世論調査は、安倍内閣に厳しい数字を突き付けた。内閣支持率は、NHKが35%、朝日新聞が33%、読売新聞が36%と、いずれも第二次安倍政権の発足以来、最低レベルを記録した。国民が安倍内閣の姿勢に強い不信感をもっていることは明らかだ。
 政治に影響を与える景気は悪くない。6月末に発表された完全失業率は3.1%とあいかわらず低い水準だし、有効求人倍率は1.49倍と43年ぶりの高さを示した。株価も2万円を超えている。経済は安定しているのだ。
 それなのに、なぜ安倍内閣が支持を失っているのか。一言でいえば、2012年12月の総選挙以来、4回の国政選挙で安倍自民が大勝を続けた結果、自信過剰になってしまった。慢心や驕りと言い換えてもいい。

 森友学園の問題では、大阪の国有地の払下げ価格が異常に安かったことが追及されている。その土地で開校が予定されていた小学校で、安倍首相夫人の昭恵さんが名誉校長をつとめることになっていた。そのため、安倍首相と森友学園の関係が問題になったわけだが、安倍首相は国会で「私や妻が関わっていれば、総理大臣も国会議員も辞める」と宣言した。いまから思えば、まったく余計な発言だった。
 僕は7月7日、森友学園の籠池泰典元理事長にインタビューした。籠池さんは、国有地の払下げ価格の値下げと、立て替え払いしていた土地改良費の返還を希望していたが、なかなか実現しないので、昭恵夫人に手紙でなんとかならないかと依頼したという。
 すると、首相夫人づきの秘書を通じて、ファクスで返事がきた。このファクスの内容について、政府は「ゼロ回答だ」と主張したが、野党は「満額回答だった」と批判している。実際はどうだったのか。籠池さんに質問すると「野党の言う通りだ」という答えが返ってきた。
 問題の国有地は約8億円も値引きされることになったし、土地改良費(1億3000万円)もその後、返還された。籠池さんは、昭恵夫人の尽力によって「順調にことが進んでいった」と話していた。
これが真相だとすれば、安倍首相の「私や妻が関わっていれば、総理大臣も国会議員も辞める」という発言は、どうとらえればいいのか。

安倍内閣の「無責任」に国民は怒っている

 さらに、追い打ちをかけたのが、加計学園の問題だ。獣医学部の新設をめぐり、政府は「首相は関与していない」と表明していた。ところが、6月下旬に神戸で行われた講演で、安倍首相は「獣医師会の強い要望で、1校に限定したが、中途半端な妥協で国民の疑念を招いた。今後は地域を限定せず、2校でも3校でも新設を認めていく」と発言した。
 これは、安倍首相自身が獣医学部の新設に関わっていることを、自ら認めたといえる。さらに安倍政権への批判が強まることになり、都議選惨敗の一因となった。
 なによりも良くないのは、安倍首相が「自分は関係ない」と逃げていることだ。首相がそういう姿勢なので、他の議員も官僚もみな、「関係ない」「記憶にない」と逃げている。この安倍首相を始めとする政府関係者の態度が、国民の目には「無責任」と映っている。その無責任さに、国民は怒っているのだ。

 内閣支持率は30%を切ると「危険水域」と言われる。安倍首相は8月に内閣改造を予定しているが、支持率が回復するとは思えない。世論調査をみると、安倍首相の資質に疑問をもっている人が多いからだ。

 もし内閣支持率がさらに低下し、30%を割り込むような事態となれば、自民党議員たちが選挙で落選するのではないかと強い不安感を持ち、自民党の内部から「安倍おろし」の風が一気に吹き出すのではないか。